UbD(Understanding by Design)と呼ばれる教育理論の中で、理解というものを6つの側面から評価するという考え方が出てきます。
理解を直接的に見ることはできないため,理解していればできるであろうこと(6側面)の表現を通して理解を評価するという考え方が採られているのである。 <研究論文>「逆向き設計」論との出合い : 『理解をもた らすカリキュラム設計』を翻訳して
この視点は「考えること」「理解すること」「わかるとはどういうことか?」を考える上で非常に参考になりました。今回は、この理解についての6つの側面を紹介しつつ、この側面と「エバーグリーンノートとの関連性」について考えてみます。
6つのことができれば「理解できている」
「わかった」という言葉は、日常で安易に使われますが、真剣に考えてみると、なかなか適切な答えが出てきません。わかるというのはスイッチのようにオンオフで考えることができるものではなく、境界線は非常に曖昧。
1つの事柄について、理解が浅い人ほど「完全に理解した」つもりになりがちで、世界の奥深さを知っている人ほど「ワタシハリナックスチョットデキル」1と謙虚になれるもの。このことは心理学の世界ではダニング・クルーガー効果としても知られている「よくある現象」です。
理解というのはこのように「見えない」けれども、理解の深さの違いは確かに存在します。
この「理解」というものについて、UbDは「理解できている」ならば、以下の6つのことができると述べています。
説明
解釈
応用
パースペクティブ
共感
自己認識
以下「エバーグリーンノートが理解できているとはどういうことか」を例に、簡単にどういうものか紹介します。
(UbDはカリキュラム設計のあり方を示すもので、正確には「理解を深めるのに有効な6つの方法」という表現の方が近いのですが、このあたりは今回はあまり重要ではないので掘り下げません)
説明
1つめの側面は説明。「エバーグリーンノートはどういうものなのか」と聞かれて「ノート1つに1つのことを書き、他のノートとリンクでつながっているもの」と説明できれば「説明ができている」状態です。
解釈
2つめは解釈。日本語にするとしっくりこない言葉ですが、これは「言い換えができる」「たとえ話ができる」というイメージ。
「エバーグリーンノートはZettelkastenのデジタル版みたいなもの」などと言えるのであれば「解釈ができている」
応用
3つめは応用。あるものを用いて、別のことに活用できるかどうか。「エバーグリーンノートを執筆に応用できるかどうか」
パースペクティブ
4つめはパースペクティブ。日本語にすると「視点」です。
これは、物事を複数の視点から考えることができるかどうか。
「エバーグリーンノートとはどういうものなのか」ということ以外にも、どういう経緯でエバーグリーンノートが生まれたのか?歴史的な立ち位置、どういう仕組みで実現できるかなど、複数の視点を得ることが「理解」に役立つということ。
共感
5つめは共感。これは「理解するためには共感が必要である」という考え方。
もっと簡単に言えば「体験をすること」
エバーグリーンノートについて勉強するんじゃなくて、自分で実際に手を動かしてやってみることで理解が深まる、ということ。
自己認識
そして6つめが自己認識。いわゆる「メタ認知」と呼ばれるもので、理解している自分を一つ上の視点からとらえること。
この場合で言えばたとえば、自分は何がわかって何がわかっていないのかを客観的に判断できるかどうか?
エバーグリーンノートを作ることと「理解すること」
この6つの側面から「エバーグリーンノートを作る」という行為を見てみると、理解のために重要なことは「エバーグリーンノートを作る」という行為と共通する行為が多く見つかります。
エバーグリーンノートの「ノートは自分の言葉で書く」というルールは「説明」という行為そのもの。ノートにリンクするのは他のカードとの共通点や差異を探すことで、これは「解釈(言い換え)」だったり「パースペクティブ(視点)」を変えることでもあります。
なにかについて書くという「体験」をして、書いたものを見返すことで自分が何がわかっていないのかを「自己認識」できる。書いたものを読むことは自分の思考のメタ認知という言い方をすれば、なぜ「書くことが理解を深めるのか」ということもうまく説明できるようになります。
ノートのリンクは自動ではなく手動で作ることが大事だというのも、関連するノートを自分の頭で探すということが6つの側面での「理解」を深めることにつながるから。
ごりゅごがエバーグリーンノートという概念にハマったきっかけは「自分が書いたものが再利用できる」ということでしたが、最近はそのこと以上に「ノートを書くことで理解が深まり、新しいことを考えることができる」というメリットの方が大きいのではないか、ということを考えるようになってきています。
Obsidianでエバーグリーンノートを作る講座(テスト配信)をやります
最近はずっとこういう感じで「ノートを作る」ことについて考えているんですが、新しい試みをするための準備として、Obsidianでエバーグリーンノートを作る講座というのをやってみようと思います。
有料で開催できる品質になりえるのか未定でありつつも、でも個人的なノートの中身を扱うものなので完全にオープンな場所での開催は難しい。そういうことを考慮して、今回は妻haruna1221がやっているコミュニティ「iPad Workers」有料メンバーの方限定で配信します。
何度かやってみて、うまくいきそうな目処が立てば他の配信手段も検討しますが、しばらくはこういうちょっと特殊な形での「間借り配信」の予定です。
Harnaさん曰く、期間限定での加入(1ヶ月でやめる)でも問題ないとのことなので、気になる方はiPad Workersの加入などもご検討ください。(夫婦で財布は共通なので、1ヶ月のみの投げ銭的な加入歓迎です)
どんな感じの配信にしようと思っているか、ということはPodcastでも話していますので、そちらもよかったらお聴きください。
🎙695 12月19日にObsidian講座をやります by ごりゅごcast
📅12月19日「Obsidianノート講座」開催 - iPad Workers Newsletter