あくまでも自己評価なんですが、最近のごりゅごはPad演奏にすごくハマって、そしてすごく上達していることを実感しています。
上達の理由の1つは、以前の記事でも触れた「練習過程を公開すること」です。人の目に触れることを意識して練習することで練習の質が大きく変わり、さらにそこから得られるフィードバックが大きな上達につながっています。
そして最近もう1つ、この「公開」に加えて「10分続けて弾く」という練習を意識するようになったんですが、これがまた大きな成果につながっています。
今回は、この手法と効果について整理して考えてみたいと思います。
簡単なものを本気で10分弾く
「10分弾く」という練習方法は、ただ10分間なにかを演奏したらそれでオーケー、というものではありません。
もうちょっと詳しく言うと、10分間演奏するからといっていわゆる「曲」を弾くというわけでもありません。
演奏するのは2小節や4小節といった音楽の最小単位。「フレーズ」と呼ばれるようなものを10分間続けて弾く練習です。
さらに言うと、そこでは「難しいやつ」を練習するわけでもありません。どっちかっていうと様々な演奏で実際に使われてるような「よくある簡単なやつ」をひたすら繰り返して演奏します。
しかも、そういう簡単なやつでも、ちょっとでも弾けなさそうだと感じるようなものは、テンポを充分に落とし、充分に余裕を持って、間違えずに簡単に弾ける状態で「10分弾く」ようにしないといけません。
もちろんこれはただ適当に10分弾けばいいというわけではありません。その簡単なフレーズを全身全霊で「上手に」「途切れず」「間違えず」弾き続けることを意識しておく必要があります。
一見すると、超地味でつまらない練習なんですが、この練習の効果の高さを知ってしまうともうやめられない。効果が高い練習だと感じられれば、その練習は超面白い練習だと感じられるようになってしまうのです。
力が抜けないと長く弾けない
10分弾く練習は、なぜ効果が高いのか。
まず一つは、演奏時の余計な力が抜ける、ということが挙げられます。
実は、難しそうなやつを1回だけ上手に弾くくらいなら、何回も繰り返し演奏してたら"たまには"上手にできるんですよ。
ただこれは、フォームとかをなにも意識せず、がむしゃらに短距離走を全力で走っているような状態です。で、これを毎日何回も繰り返していたら、たまたま自己ベストタイムを出すことができた、みたいな感じ。
1回2回たまたま上手に弾けるというのは、そういう状態。
これでは「音楽」は上達しません。
だから「10分連続で弾く練習」が効果があるのです。
余計な力が入った「無理矢理弾けてる」状態では、絶対に10分連続して間違えずに弾くことは出来ません。長く安定して演奏を続けるには「楽に弾ける方法」を身体に身に付けさせないといけないのです。
そして、この練習によって楽に弾けるようになると、そこから様々な波及効果が現われてきます。
楽に弾けるということは、それだけ分肉体や脳に余裕が出来るということ。そうすると、その余裕をこれまで以上に音楽的な部分に使うことができるようになります。
また、小さな単位を楽に演奏できるようになれば、ひとつの曲を演奏する時にも、覚えたフレーズ、身に付けた技術をほぼそのまま曲の中に適用することができるようになってきます。音楽をチャンク化して、覚えるコストを少なくできる、というイメージですかね。
結果的に一曲を一気にまるまる覚えようとするよりも、こうやって小さな単位を少しずつ身に付けていった方が応用範囲が広くなる、というわけです。
音楽のカッコよさはリズムや音価
音楽を始めたばかりのころって、まず最初は「ちゃんと音階があってるかどうか」に意識が向かいます。そして、その次は「速く弾ける」みたいな派手な演奏に目を奪われがちです。
ただ、ほとんどの音楽のカッコよさって「いいリズム(どのタイミングで弾くか)」「いい音価(どこまで音を伸ばすか」「適切なベロシティ(強弱の付け方)」なんですよ。
特に生楽器を主体にした音楽なんかだと、単に「譜面通りピッタリ弾ける」だけではカッコいい演奏にならないことが多いです。4分音符を4つ弾くだけでも、それを「どの強さでどこまで伸ばすとカッコイイか」みたいなことは、演奏者の音楽的なセンスによって選ばれ、それによってカッコイイかどうかがわかれたりしています。
もちろん「わざと機械的に弾く」とか「機械的であることがカッコイイ音楽」はあるけど、それはそれで「意図してそうしている」わけであって、なにも考えずただ譜面通りピッタリ弾いているわけではありません。
(音楽は、ただ正確に弾ければカッコイイわけではないというのは「AIが書く文章がおもしろくない問題」なんかにも近いものを感じます。これはこれでまたそのうち考えてみたいことですね)
「なんか曲っぽいやつが演奏できたわーい楽しい」の次を目指すとなると、こういうことがとても重要になってきます。
そして、そういうタイミングとか強弱を狙ってコントロールできるようになるためには、まず「簡単なことを超余裕で弾ける」ことができていないとどうしようもないわけです。
こういうことは、昔から頭ではわかっていたつもりでした。
でも、やっぱり自分一人でやってる限りどうしても「目の前」のことに意識が向いてしまうんです。一人で練習してると録音をしなければ自分の演奏を客観的に聞くことも出来ず「簡単なことがちゃんと音楽的に演奏できているかどうか」もわからない。
そして、どうしても「それっぽい」ことができるとそこで満足してしまい、地味だけど大事なことになかなか意識を向けることが出来なくなってしまう。
こういう地味だけど大事なことに目を向けられる練習方法というのが「10分弾く」だったんです。(さらに言えば、10分弾いてる練習を、きちんと録画、録音して振り返ることも重要です)
アトミック・シンキングへの応用
と、ここまでは大半のナレッジスタック読者の方にとって全然関係なさそうな話をしてきたわけですが、この考え方って、かなりの部分をアトミックシンキングにも応用することができるよね、ということを思ったわけです。
文章を書くという観点でも、Obsidianを使うという観点でも、私たちは「派手なこと」に目を奪われがちです。読みやすくてわかりやすい文章をたくさん書けることが「知的」な感じがするし、Obsidianにたくさんのプラグインをインストールして、色んな機能を使いまくることに憧れたりする。
ただ、実は「書いて思考を深める」とか「Obsidianを使いこなす」ということを大きな目的とする場合、こういった「派手なこと」って大して重要じゃないんです。
いきなり有名な小説家のような優れた文章が書けるわけがないし(それができないからアマチュアなのである)、専業のライターのようにたくさんの文章を早く書けるわけがない。
Obsidianにたくさんの機能があるからって、それを全部使わないといけないわけではないし、便利なプラグインがあるからって、それをインストールしなければならないわけでもない。
繊細なピアノ曲で、場違いな大音量のロックギターが乱入してきたら曲が台無しになってしまうのと同じで、書いて考える、思考を深めるという目的において、自分に必要ない機能やプラグインなんかのことを気にする必要はない。これらは、なくても問題ないどころか、トラブルや速度の観点で見ればむしろ邪魔だから使わない方がいいとさえ言えるくらいです。
派手で目立つことに目を向けるのではなく、まずは一番応用範囲が広い大事なことを、きちんと丁寧に練習する。
つまり「10分弾く」というのをアトミック・シンキング的に解釈するならば、
めちゃくちゃ簡単に見えることを、めちゃくちゃ丁寧にやること
それを(できれば)毎日途切れず続けること
ということになります。
こういうことをきちんと続けて、簡単なことを当たり前にできるようになってから、次の段階に向かっていく。数ヶ月という単位で見たとしても、その方が結果的により早く上達します。
ワークシートでの実践
そして、ここからが超大事なはなしです。
ごりゅごが最近作った『アトミック・シンキング実践ワークシート』は、まさにこの「10分弾く」の考え方を見事に取り入れた仕組みになってるやん、ということに気がついたのです。
『アトミック・シンキング実践ワークシート』で一番最初にやる練習は、Obsidianのデイリーノートに毎日食べたものを記録しよう、という(一見するとものすごーく簡単に見える)ものです。
そしてこれを1週間続けられたら、次は「食べたものについて文章で書く」ことをやってみよう、と提案します。
最初の一ヶ月間の練習は、これだけしかありません。
実践者の変化
現段階でのワークシートは、これらの練習について「なんでそれをやるか」とか「最初にやってはいけないこと」とか「くわしい練習の方法」なんかが書かれているだけです。難しいことはやるな、ということを徹底しています。
また、こうした練習結果を「公開」することが重要だと考えて、練習結果を発表する場所(Discord)を作りました。
他者からのフィードバックが学びのスピードを引き上げるで書いた、発表の効果と、師匠の存在という部分は、このDiscordによってかなりの部分を実現できていると思っています。
現在、Discordで発表の場を用意してから半月くらい経過したところなんですが、発表を続けてくれている方達はほんの2週間で書く能力、観察する能力などがものすごく上がっています。
実は、食べたものについて文章で書くことの効果って、ただ「文章を書く練習」であるだけでなく「観察」だとか「注意を向ける」練習でもあるんです。
そして「食べたものについて書く」という、一見くっそしょうもないことにまじめに取り組んでくれている方達は、誰が見てもわかるくらいのレベルで「観察して、書く」力が上昇しています。
ごりゅご自身、この練習は絶体に効果あるだろう、と目論んではいたことなんですが、こんなにもすぐに効果が現われるとは思ってなくて、マジで超驚いています。
1日5分10分でも、基礎的なことをきちんとまじめに続けるのって、めちゃくちゃ効果高いんですよ。
地味な練習はすごいぞ
食べたものについて書く。そしてそれに慣れたら、食べたものについて文章で書く。
超簡単で、誰にでもできそうなことですが、超まじめに、きちんと繰り返していれば、目に見えて効果が上がります。
ワークシートの中にはいろいろ細かな注意とか、モチベーションを高めるための文章とかは書かれていますが、ぶっちゃけそんなのなくても一人で出来る人は、一人でやってれば充分な効果を得られます。
そして、これを一人で続ける自身がないという人は、ワークシートを買ってください。ワークシートはまだ実験段階なので「アーリーアクセス価格」です。安いです。
少なくともワークシートが完成するまでのおよそ1年間は、参加いただいている方々のDiscordサポートも続ける予定です(毎日めっちゃ褒めてます)。
自分で言うのもなんですが、1年分の「褒める&アドバイス」が付いてくるならば、今の値段の10倍以上の価値があると思ってます。
とは言え、褒めること自体は実際にとても楽しいんですが、個人でやっていることなので、できることには限界があります。サポートの質を保つためにも、Discordの参加数には制限を設けています。(あと50人増えたらリンクは有効期限切れになります)一人でやれる人は一人でやればいいけど、そういうのが得意ではない、誰かと一緒にやった方が継続できる、と考える人は、ぜひ早めの参加をご検討ください。
すでにDiscordに参加されている方々も、今からでもまったく遅くないので、是非「発表」にご参加ください。
補足:ナレッジスタックとワークシートの違い
一応軽く、現段階での「ナレッジスタック」と『アトミック・シンキング実践ワークシート』の立ち位置の違いをまとめておきます。
ナレッジスタック
記事と月1回のセミナーを継続
豊富な過去動画でObsidianの基礎が学べる
ごりゅごの体験をベースにした最新の知見を提供
ごりゅごの体験や変化を見るメタ・コンテンツとしても楽しめる
アトミック・シンキング実践ワークシート
整理された段階的な学習コンテンツ
基本に忠実な実践方法
継続的なフィードバック
コミュニティでの相互学習
ナレッジスタックの更新については、今まで通りどころか、最近は「褒める」効果によってアイデアがたくさん得られているので、これまで以上にたくさん更新が出来るんじゃないかと思っています。
また、ワークシートに関しても、日々の発表を継続してくださる方々のおかげで、超やる気になって、いい感じにアップデートも進められています。
ワークシートはこちらから購入いただけますので、是非ご検討ください。
→『アトミック・シンキング実践ワークシート』というObsidianのテンプレートを作りました|五藤隆介(goryugo)
そして、ごりゅごに褒められていい気分になった方々が、これだけ褒めてくれたならついでにナレッジスタックの有料プランを契約してやるか、とでも思っていただけたら、これもまたとても嬉しいです。