2021年からおよそ2年間、Heyという有料のメールサービスが気に入って、ずっと使い続けています。
HEY - Email at its best, new from 37signals.
きっかけは、Googleに俺の情報全部持っていかれているのが気にくわん、みたいなところからだったんですが、これを使ってから本当に「メール」というものがものすごく便利に、快適に使えるものに変化しました。
なんでHeyを使ったらこんなに便利になったのか。それは簡単に言うとHeyが「普通のメーラーとは全然違う」ことが理由です。
よくも悪くもHeyの使い心地は独特です。彼らはかなり強い信念を持って「おれたちが考えるベストなメールの使い方」を提示しており、Heyでは基本的にその考え方にそったメールの運用しか出来ないようになっています。
こうしたメールの使い方は大きく好みが分かれるものだと思いますが、自分はとにかく本当にこれで「メール」という概念が変わりました。
実際にHeyを使うかどうかはさておき、この概念を知っておくことは跳躍に立つ。というか、この概念はメールの整理だけじゃなくて、あらゆる情報整理のときに役に立つんじゃないだろうか?と思ったのです。
今回は、そうしたHeyの素晴らしさなどを語りつつ「Heyから学ぶ情報整理」について考えてみたいと思います。
Heyの3原則
Heyというメールアプリでは、メールボックスが「3つ」作られます。
一つが、もっとも一般的な「届いたものを置いとく場所」で、Heyでは「Imbox」(nではなくm)という名前が付けられています。
次が「The Feed」と呼ばれる「読んだら捨てていいやつ」を入れておく場所。これは、スクロールのみで中身が確認できる上に、一定期間経過後に自動で消去されるようにもなっています。
そして最後が「Paper Trail」と呼ばれる「読まなくていいけど保存したいもの」を入れておく場所。領収書みたいなのを置いとく場所、と考えるとだいたいあってるんじゃないかと思います。
また、これら3つのメールボックスは、役割に応じてそれぞれの見た目も異なります。
Imboxは、いちばん普通っぽいイメージの場所なんですが、ここに届いたメールは「見たら何らかのアクションを行え」が基本ルールです。つまり、Imboxを見るときは「メールを処理するモード」になることが求められているということ。なんとなーくメールを見て、なんとなーく読んで、あー面倒くさいな、また後で返事しよう、みたいなことをやりづらくなるような仕組みになっているのです。
次のThe Feedは「見ても見なくてもいい」というのが基本ルール。昨日楽天イーグルスが勝ったから今日はポイント2倍ですよ、なんてメールは翌日になったら価値は限りなくゼロです。そんなメールをいちいち整理したりするのは、あまりにも意味がなさすぎる。そういうメールは読まなかったら読まなかったで問題ないし、見たか見てないかも適当でいい。スクロールで中身をざっと確認して、暇で読みたいと思ったなら読めばいい。
そうした考えの元、ここにはただ新しい順にメールが並ぶだけという「Twitterのタイムライン(完全時系列)」のような見せ方になっています。
そして Paper Trail。
ここは、返信する必要はないけど取っておいた方がいいと思うメールを置いとく、という場所。
ここに届いたメールは、読んでも読まなくてもいいもの、というのが基本です。でも、ここに届いたメールは、記録としては残しておいた方がいい、というタイプのメールを保存しておくところ。
日常的に接する情報に3つの分類を当てはめる
実はこの3種類の分類って、自分が日ごろから接しているありとあらゆる情報にも適用できるんじゃないのかな?っていうのが今回の内容で考えてみたいことです。
上記ルールに従って、メール以外の自分が接する情報も分類することができれば、それぞれの情報についての適切な対処のヒントになるのではないか。そうすれば、いろんな情報整理に関する悩み、みたいなものがかなりすっきりするのではないか。そんなことを思います。
たとえば、LINEで友達から届くメッセージ。これは Imboxに分類できる代表格でしょう。既読スルーはマナー違反で、読んだらなんらかのアクションを起こす。「既読通知」という仕組みによって、そうした行動を起こしやすくなるようにデザインされています。
そして(円滑な人間関係のためには)LINEで届いたメッセージはきちんと返事をすることは重要な行為だと考えることができます。ただし、返事さえ返しておけば適切な整理や保管には手間暇をかける必要もないとも言えるのがこのタイプの情報です。
また、LINEには通常の友達以外にも「お店アカウント」のような存在もあります。これを友達登録すると、そこからもメッセージが届きます。こいつらは、読んでも読まなくてもまったく問題ない The Feedの典型。
そして、この「Imbox」と「The Feed」を完全に同格に扱っているというデザインこそが、LINEが使いにくいと感じる理由の1つでもあります。
友達からのメッセージも、お店から届くどうでもいいメッセージを一切区別せず全部同じレベルで「未読管理」させてくる。お店からの連絡なんてバッジでのお知らせなんて必要ないのに「メッセージが届いてますよ」と知らせてくる。これも、原理的には Heyと同じようにお店と友達を分けてくれればもっとずっと便利になるはずですが、そうはなっていないし、そうなることはきっとないでしょう。
(もちろんある程度の対策はできるが、限界はある。そもそもLINEは、お店アカウントの効果を高めるためにあえてこうした「ダークパターン」を採用しているのだと思われる。このあたりは私企業のサービスをインフラの用途使う限りついて回る宿命)
で、そういう風に考えると、私たちが整理して保管しておきたいような情報って、結局「Papertrail」に分類されるようなものしか存在しないのではないか?と思えてきます。
そしてさらに、私たちが日ごろ接している情報ってほとんどが(見ても見なくてもいい & 時間が経ったら捨てればいい)The Feedだとも言えるのではないでしょうか?
まずそもそも、このニュースレターも基本的には「見ても見なくてもいい」「返信も必要ない」存在です。SNSや、そこで目にするニュース、テレビや新聞、雑誌なんかも基本すべて「The Feed」です。どれも「見ても見なくてもいい」「返信も必要ない」「保存しておく必要もない」情報ばかり。
自分自身、エバーノートの時代から「情報の整理・保管」ということをずっと考えてきましたが、Heyの概念を突き詰めていくと、我々には「情報整理」などというものはほとんど必要ないのではないか、とも感じてきます。
そして、そこに気がつけるようになることこそがHeyというメーラーの情報整理の仕方から学べることなのではないか、と。
「そんなこと言いながらお前Obsidianめっちゃ使っとるやん」
そうなんですよ。めっちゃObsidian使ってるんですよ。ObsidianだけじゃなくてDayOneも大好きで、そこにもいっぱい日記をため込んでるんですよ。
ただ、ごりゅごがObsidianやDayOneに残している情報は、さっきの分類のどれにも当てはめることはできません。そして、そうした情報こそ我々が整理して保管する価値があるものなのではないか。それこそが一番言いたかったことなのです。
次回は、それらの「どれにも分類されない情報」について掘り下げていってみましょう。