自分の将来の時間の使い方に影響を及ぼさないような選択に、意思の力や時間を使うのはもったいない。『幸せをお金で買う5つの授業』(今ならKindle Unlimitedで読めます)の中ででてきたフレーズが、今も強く印象に残っています。
インターネットの登場で情報は爆発的に増え、なにをするにも「たくさんある中から自分で好きなものを選ぶ」ということが可能な時代になりました。ですがこれには「よいこと」だけでなく「よくないこと」も隠されています。
今回は「インターネット登場のおかげ」で増えすぎてしまった「多すぎる選択肢」の問題点や、それにどのように対処していくのかについて考えてみたいと思います。
多くのものはどれを買っても変わらない
まず現代のインターネットでの買い物で意識したいのは、数多くの製品は大抵のものは「どれを買っても大して変わらない」ということです。これは決して悪い意味ではなく、今やほとんどのものが「十分にいいもの」ばかりだということです。
たとえば現在、ボールペン1本を買うにしても「無限」と言える選択肢が存在します。試しにAmazonで「ボールペン」というキーワードで検索をしてみたら、6万件以上の検索結果が出てきました。
ごりゅごが子供の頃の記憶では、近所の文房具屋においてあったボールペンはせいぜい十数種類だったことを考えると「夢」のような世界です。ただ、この状況は決して手放しで喜べるものではありません。我々の意思の力、よい決断ができる回数というのは限られて1おり、特に選択肢が多いものから一つのものを選ぶ決断は大変なのです。
今どき、1本100円出せばどのボールペンも十分に「いいもの」ばかりで、ほとんどの人にとって、ボールペンはどれを選んでもほとんど同じようなもの。ならばそこで無理して「選ぶ」よりも、目に付いたものをなんとなく買う程度でも「ほとんど同じこと」
ここで考えたいのは、よりよいボールペンを求めることの是非ではありません。世の中のありとあらゆるものの選択肢が多すぎることによって、我々は常に「決断疲れ」の状態になっているのではないだろうか、ということです。
自分にとって大事なものを選ぶときに、意思の力や時間を使うことは重要です。ですが、すべてのものに同じような重要度をつけて「選択」をしていては、本当に重要な決断ができません。
大抵の場合は標準で事足りる
我々が知るべきは、人間はたいていのものは「標準」で満足できる、ということです。特に「消費」に関しては、知らなければ欲しいと思わないし、比べなければ違いなんてわかりません。
バリー・シュワルツは『なぜ選ぶたびに後悔するのか』(『The Paradox of Choice』)の中で、買い物や職業選択、恋愛などでは選択肢が少ないほど生産性が上がり、満足度も高いという研究結果を示しています。選択肢は「変更不可能」で「他人と比べない」のも重要だと述べています。
この視点で考えると、情報がたくさんあることは「よいこと」ではなく「よくないこと」です。
これに対しては、選択肢のカテゴリ分けをする(不要な選択肢を一度の決断で一気に減らす)だとか、他人を参考にする(オススメを買う、売れているものを買う)などという方法もありますが、大抵の人が当たり前にできていることばかりで、大したことではありません。
重要なのは、現代は選択肢が多すぎるということを認知した上で、それでも「選ぶ」価値があるかどうかを見極めることです。
比較するときに比較表を眺めることは有効ですが、そもそもそれを比較すること自体に意味や価値があるのかどうか。今悩んでいることは、そもそも悩むこと自体が意志力と時間の無駄なのではないだろうか?自分にとって大切ではない「ボールペンを1本買う」程度のことで、比べたり悩んだりすること自体が不要なのではないか?
逆に、本当に重要かもしれないことを、面倒だと思って「みんながそうしているから」という理由で選んだりしていないだろうか?という視点も重要です。(売れています、という売り文句は、面倒な比較という行為を「他人の判断に頼る」ように促している)
選ぶということは、思っている以上に大変でエネルギーを使う行為です。だからこそ大事なのは、どこでエネルギーを使うべきなのか?どうでもいいことにエネルギーを使って、大事なことをいい加減に決断していないか。
経済的な視点で考えると、車を買うときの1万円の差は、スーパーで100円安いものを選ぶときの100倍の重みがある判断です。金額での判断は「比較」ができるので簡単ですが、もっと人生に重みがある「転職」「引っ越し」「結婚」などは、ボールペンを選ぶときとは重みが異なります。
こういう重要な判断を「なんとなく」にしないためにも「テーマをもって生きる」という方法は頼りになります。