前回のエバーグリーンノートの話などをまとめてみて、最近自分のObsidianの進みたい方向性というのが見えてきた感じがします。
それから色々とノートの整理なんかを繰り返して、ようやく一通りのノートが整ってきた、ってイメージです。
花粉症の症状が現れはじめて危機感を募らせている今日この頃ですが、とりあえず今回は「Link Your Thinking」というものと、そこで出てくるMOC(Map of Contents)という概念についてまとめてみたいと思います。
LYTが生まれた経緯
LYT(Link Your Thinking)という概念は、Nick Miloという人が考えたZettelkastenをデジタルでうまく使うための方法、という感じで理解をすると分かりやすいです。
そしてMOC(Map of Contents)というのはLink Your Thinkingの中で登場する「ノートをリンクで繋ぐためのノート」という感じのものです。
このLYTというものを考え出したNick Miloさんは、私と同じようにかつてEvernoteに心ときめいて、Evernoteを何年も愛用してきた人です。
ただ、いろんな雑多な情報(ウェブクリップ)をどんどん溜め込んでいくうちに、だんだんEvernoteにノイズが増えてきて「5年後にはEvernoteを開くのが楽しくなくなった」という経験をしています。
その後、独自フォーマットのノートに嫌気がさして、プレーンテキストでの情報管理をはじめて、色々なツールを渡り歩いて出会ったのがObsidianのベータ版。
Nick MiloさんがEvernoteに使っていた時に考え出した「マップノート」という概念とObsidianが組み合わさってLink Your Thinkingという仕組みが完成します。(マップノートはのちに「MOC」になる)
脳みそは階層構造ではうまく考えることはできない
知識の整理ということを考えるときに、特に良くないのが「フォルダ構造」というパソコンに居座る構造化された整理の方法です。
脳の構造というのは「フォルダ」のようなものではなく、たくさんのシナプス同士が複雑に繋がりあった「ネットワーク」
この仕組みを踏まえると、人間の脳にとって自然なのは、フォルダという「構造化されたもの」ではなく、ノート同士がリンクで繋がったネットワーク。
アイデアを出したり考え事をしたり、それらをまとめたりするような「知的行為」は、多くの人は階層構造ではうまく扱うことはできない、というのがPKM業界を見ているとよく言われていることになっています。
MOC(Map of Contents)を作る行為自体に「整理」や「発想」の効果がある
この辺りの経緯を踏まえると、Link Your Thinkingという考え方はすごくシンプルに一言で説明ができます。
「フォルダで整理するのをやめてリンクで整理しよう」
つまり、自分が作ったノートを「フォルダ」に保存しておいてもいいことないから、ノートはリンクで繋げよう。
そして、たくさんのノートを整理して繋げる時には、MOCという「リンク集」みたいなやつがあると便利だよ、ってのが基本的な考え方。
フォルダとMOCの最も大きな違いは、フォルダというのはメモやノートがフォルダに対して「1対1」でしか存在できないのに対して、MOC(リンク)にはその制限がないこと。
「リンク」を使うこと自体はObsidianなどの最近のデジタルノート系のツールで簡単に実践できるようになりました。このこと自体はわりと「普通」のことなので、あんまり大したことしてるようには感じません。
Nick Miloさんが考えたLink Your Thinkingというのがすごいのは、この「リンク」というものを突き詰めて、さまざまなリンクの使い方がある、ということを教えてくれたこと。
例えば上の図では(分かりやすくする意味も含めて)HOME、MOC、ノート、というものを横3列に並べていますが、MOCというものはもっと自由なもので、どんな風に使ってもよいものです。
MOCの作り方サンプル
例えば「Podcast」という名前のMOCを作ろうとする場合のことを考えてみます。
最初に、MOCを作る素材として、Obsidianの中身を「Podcast」で検索してみて、PodcastMOCというノートに「リンク」を作っていきます。
カテゴリでまとめてみる
こうやって作ったMOCといういっぱいリンクがあるページは、何をどうしようが「自由」なんですが、例えばわかりやすい分類方法として「カテゴリ分け」して並べてみる、という方法があります。
「Podcastに使う機材」というカテゴリのノートを集めてみたり「参考にしたいPodcast」というカテゴリでノートを集めてみます。
「Podcastに使う機材」がすごくいっぱいあったなら、「Podcast」というMOCから「Podcastで使う機材」という感じで、MOCの中のMOCを作る、というのもあり。
こうやって自分が作ったノートを元にしてカテゴリ分けを考えていくと、この段階で「あ、他にもPodcastで使う機材があった」って思いつくかもしれない。参考にしたいPodcastを並べてみたら「実は短いPodcastばかり参考にしたいと思ってた」みたいなことに気づけるかもしれない。
もしこうやって集めて並べてみて、今まででは足りないノートが見つかったりしたなら大成功。そういうノートを新しく作ってあげればいい!
MOC作ってめっちゃよかったじゃん!
違うカテゴリ分けをしてみる
MOC作りの別のアプローチとして「同じノートをさっきと違う分類にして並べる」という方法もあります。
例えばさっきPodcastに使う機材、っていうMOCを作ってみたんだけど、これにはいろんなカテゴリ分けが考えられます。
一番シンプルなのは「マイク」とか「ヘッドフォン」みたいに機材の種類でカテゴリ分けしてみること。
でも例えば他にも、機材の種類ではなく「予算別」という基準で機材を並べてみてもいいかもしれない。
こうやって最初とは違うノートの分類をしてみたら、またさっきとは違う発見があって、そうするとこのノートちょっと直したいな、ってことになったり、このノートも追加したいな、ってことにもなるかもしれない。
こういう感じで、MOCを作ってたら、足りないものが見つかったり、今あるノートを改造したくなったりだとか、こういうことが起こることこそがMOCを作る価値だと言えるのです。
MOCによって今までのノート同士が影響しあって、新しいノートを作り出すきっかけになってくれる。ごちゃごちゃになってた自分が考えてたことを、いろんな視点で整理して、ノートを整理していくことで自分の考えも整理されていく。
ここで重要なのは、こういう「リンクベースの分類」では同じノートが何回でも出てくることがある、ということです。
フォルダのような階層構造とは違って、同じノートへ複数のノートからたどり着くことができるし、同じノートがたくさんの「マップ」の一部として存在することもできる。
この、1対1に縛られない自由度の高さこそがネットワーク構造の価値であり、新しい繋がりを発見して、新しいアイデアを生み出す時に役に立つ可能性を高めてくれるわけです。
また、MOCというやつは所詮ただのテキストで作ったリンクというだけのもの。なので、1回作った後で修正するということも至って簡単です。
MOCというのは1回作っておしまい、なんてことは決してなく、何か新しい知識が加わったり、新しい発見がある度に変化するのは当たり前のこと。
フォルダ構造と違って、新しいものMOCを簡単に追加できたり、いろんな形に変化するのが簡単だという「流動性の高さ」というのもMOCというものを考えるときに非常に重要な点の1つです。
_Start Here - LYT Kit - Obsidian Publish
My PKM Story. The evolution of FAST notes to FREE… | by Nick Milo | Medium
あとがき
MOCは、まだまだここからどこまでも掘り下げていけるのですが、とりあえず全体像をざっとつかめるようにするためにも、ひとまずこの辺りで一区切りにしたいと思います。
最近は、どうやったら「俺が読みたいニュースレター」を作ることができるかな、ってずっとそんなことは考えているんですが、つい先日「こういう形にしたらいいかも」って思える形を見つけることができました。
今回のやつは、とりあえず「LYTシリーズ」をざっくりとでもまとめたくて「こういう形にしたらいいかも」ってフォーマットとは違うものなんですが、今思ってる形が期待通りのものになってくれたら、これなら有料でも読みたい!ってものになるはず。
そんな価値あるものをまずは目指していこうと思っています。
最後に、忘れてはいけないのは、Link Your Thinkingというものも、前回紹介したエバーグリーンノートというものも、どれもあくまでも「自分の生産性を高めるための手段」です。
こうやって自分の脳内を整理している行為自体は非常に楽しいんですが、それにかまけて自分が最もやるべきこと、というのは忘れないようにしないといけません。
ごりゅごはこの「ニュースレターを更新する」という目的を忘れて自分のノートの整理にかまけていてはいけないのです。
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