自己紹介など
こんにちは。tksと申します。ラジオやポッドキャストを聴くことが趣味の30代半ばの男性です。
いわゆる知的生産に興味があり、ナレッジスタックニュースレターを購読しています。最近は、公開用のScrapboxを作ったり、トンネルChannelに投稿したりして、発信も行っています。
そうしたことがきっかけで、ナレッジスタックへの寄稿をさせていただくことになりました。こうした機会は初めてで至らない点もあると思いますが、ナレッジスタックを読んでいる方には多少なりとも興味を持ってもらえそうなことを書くつもりです。
ナレッジスタックニュースレターの読者が、実際にどうやって実践しているかを書いていきます。特に、デジタルノートをどのようにして使っているのかが中心になります。
何か正解を提示するのではなく、私の試行錯誤を読んでいただくことになるでしょう。こんな感じでやってます、ということを紹介しますので、参考になりそうなところは参考にしていただければ幸いです。どうぞよろしくお願いします。
そもそもなぜデジタルノートツールを使うのか
ナレッジスタックニュースレターを購読している人は、おそらく何かしらのデジタルノートツールを利用しているはずです。もちろん理由はそれぞれでしょうが、仕事でも趣味でもいいから、デジタルノートを使って何かしらの「知的生産」をしたいという思いがあるのではないでしょうか。ちなみに私は、究極的には「頭が良くなりたい」と思ってデジタルノートツールを使っています(頭が悪そう! )。
昨年、私が読んだ中のイチオシ本に『人を賢くする道具』という本があります。この本は認知科学者のD・A・ノーマンが書いた本で、進んだテクノロジーによって良いことも悪いことも起こる時代において、テクノロジーを使って人を賢くするにはどうすればいいかについて書かれた本です。
反テクノロジーという方向ではなく、テクノロジーをいかにして使うかという視点で書かれているのが面白い本です。1993年が初出なのに、まるで現在を予言したような記述も多くあって驚きます。さらに、デジタルツールの使い方のアイデアがどんどんと浮かんでくる刺激的な本で、今回の寄稿においても、この本を中心に考えたいと思うほど影響力の大きい本です。
ちなみに、この本のタイトルにある「道具」という言葉の射程は広く、人が作り出したもの全般を指していて、その中にはもちろんデジタルノートツールが含まれます。この本の言葉を借りるのであれば、私は「デジタルノートツールという道具を使って賢くなりたい」という気持ちがあります。
デジタルノートツールがどんな風に自分を賢くするのかを考える
とすると、次に考えたいことは、どんな風にデジタルノートツールを使えば賢くなれるのかということです。
もちろん、明確な答えはありません。そもそも人によって認知特性が違うからです。情報をどうやって受け取って、処理するのかは個人差があります。だから、その認知特性に合わせてデジタルノートツールを使う必要があります。もっと簡単に言うと、得意不得意は人それぞれなのだから、使い方も人それぞれだということです。
自分の得意を把握するのは難しいですが、苦手なことは割とわかるはずです。私は、事務仕事といった細かい作業をすることが苦手です。いつ、どんな風な手順でやるか、すぐにわからなくなります。だから、リマインド機能を使っていつやるかを教えてもらったり、作業の手順をリスト化していって手順を把握しようとしたりしています。つまり、自力ではなくツールに助けてもらうわけです。
ですので、デジタルノートツールを使って賢くなるためには、まず自分の得意なところをデジタルノートツールに伸ばしてもらいつつ、苦手なことを補ってもらうということを考えるといいでしょう。
デジタルノートツールで賢くなるためには、これまでの経験も考慮すべきでしょう。これまでデジタルノートツールとどんな付き合いをしてきたのかによって、ツールの使い方は変わってくるはずです。デジタルノートツールを触ったことがない人に、いきなりObsidianを使わせようとしても難しそうです(私だったら初心者にはScrapboxをおすすめします)。
私は現在はさまざまなデジタルノートツールを使い分けていますが、これまでの経験があったから可能になっているところがあります。自分がデジタルノートツールマスターだと言う気はありません。ただそれでも、今の使い方に至ったのは、過去の経験があったからだと自信を持って言えます。ここで言いたいのは、経験がないとデジタルツールが使えないということではなく、経験次第で使い方は変わってくるだろうということです。
いずれにせよ、デジタルノートツールがどんな風に自分を賢くしてくれるかを考えることが重要です。記憶力が良くないから記憶を補助してほしいのか、思わぬアイデアを得るためにノート同士が繋がるようにして欲しいのか、見た目が好みでやる気を高めて欲しいのか、といったように、「ツールを使って私はどんな風に賢くなりたいのか」を折に触れて考えることが大事です。偉そうなことを書いていますが、今回この文章で書いていくことで私自身も内省する良い機会になっています。
これまでどんなツールを使ってきたか
過去の経験によってデジタルノートツールの使い方は変わってくるという話をしたので、私のこれまで使用してきたデジタルノートツールの変遷(=挫折の歴史)を簡単に紹介します。
本格的にデジタルノートツールを使い始めたのはEvernoteでした。大学生のころにライフハック系ブロガーの方々の記事を読み、そっくりそのまま真似するというところからスタートしました。「なんだかすごそうだ」と思い使い始めたものの、何に使っていいのかわからず、多くのブロガーの方々が紹介していた通りに、Evernoteになんでも放り込むをベースに運用しました。アイデアを思いついたらすぐにメモを取ったり、タスク管理もトライしたりしたのですが、全然うまくいきませんでした。
次に、WorkflowyやDynalistといったアウトライナーを使い始めました。これも、「アウトライナーがいいらしいぞ」ということを聞いて、ただそのまま真似をしただけでした。しかも、ツールとしての役割が全然違うにもかかわらず、Evernoteでやろうとしていたなんでも放り込む使い方をそのままをやろうとして、うまくはいきませんでした。
その後、Scrapboxも使い始めました。ネットワーク機能や2hopLinkには感動しましたが、うまくいったとは言えませんでした。ただ、今では役割を限定させてうまく使えるようにはなってきました。
そして、RoamResearchと出会いました。この出会いは、現在の私のデジタルノートツールの使い方に大きな影響を与えました。「今日」をベースとするコンセプトががっちりハマったのです。さらに、アウトライナーとネットワーク機能が一緒になったツールは非常に魅力的でした。
ただ立ち上げまでのスピードの遅さや価格の高さといった理由から利用をやめてしまいました。ちょうどその頃、ごりゅごさんがObsidianを使い始めたことを知って、真似をするようになりました。
1、2年ほど前からLogseqを使うようになりました。ただし、Logseqに完全に移行したわけではなく、ObsidianとLogseq、さらにはScrapboxを併用するようになりました。この寄稿では、実際のところ、どんな風に併用しているのかについても書いていきます。
ここ1年くらいで、ツールの使い方に変化がありました。それは単に誰かの使い方を真似をするだけではなくなったということです。これまでは、基本的に誰かの真似をしてばかりでした。それぞれのツールの良さがわかっていなかったり、自分が何をしたいのか、つまり自分がどんな風に賢くなりたいのかがわかっていなかったのです。
でも、今は違います。多くの挫折を重ねてきたことによって、ツールに関する知識も増え、その結果、どんな風にツールを使えばいいのかを考えることができるようになりました。今でもごりゅごさんの使い方を真似をしていますが、単純に真似をするだけではなくなりました。自分の場合はどんな風に使うのがいいだろうかを意識するようになりました。その結果、「賢くなっているぞ!」と思えることが増えました。
デジタルノートツールを使う上での心得え
以上を踏まえた上で、デジタルノートツールを使っていく上での心得えとして、次の2つのことを考えています。
「賢く」なるために使う
認知特性や過去の経験を考慮した上で使う
まず、「『賢く』なるために使う」が1つめの心得えです。何もツールを使わないときよりも、デジタルノートツールを使ったときの方が自分が「賢く」なれるようにするということです。実際には、「どんな使い方だとしても、何も使わないときよりもマシ」くらいの心持ちでツールは使います。そのためには、自分のデジタルノートツールの使い方が、賢くなるために役立っているのかどうかを折に触れて考えた方がいいでしょう。
そして、「認知特性や過去の経験を考慮した上で使う」が2つ目の心得えです。要するに、誰かの真似をするのではなく、自分に合ったツールや使い方を考えるということです。これは、半分以上自戒のために書いています。当たり前のことですが、デジタルノートツールの使い方にそもそも正解ありません。それにもかかわらず、私はついつい自分以外のどこかに正解を持っている人がいて、その正解を知りたいと思ってしまいます。しかし、これまでの経験上、それはうまくいきませんでした。
私はごりゅごさんのデジタルノートツールの使い方や『アトミック・シンキング』にかなりの影響を受けていますが、やはりそのまま真似することはできませんでした。このことは、ごりゅごさんのお話が役に立たないことは意味しません。ごりゅごさんと私は違う人間なのだから、そのまま真似をすることはできないということです。
最近になって、その当たり前の事実を少しずつ受け入れることができるようになって、自分なりの方法を考えるようになりました。ですので、ごりゅごさんがおっしゃることと重なる部分もある一方で、実践をしていけば必ず違う部分が見える、という前提で今回の連載を書き進めていきます。
私は現在、Logseq、Obsidian、Scrapboxといった複数デジタルノートツールを使っているので、次回はその使い分けについて書いていきます。