視覚情報と言語情報というものは頭の中で「別々の領域」を使う行為で、学習時に両方を活用することで、高い効果を得られる。
心理学者のAllan Paivioは、これにDual coding theoryという名前をつけました。
この理論は(議論の余地はありつつも)幅広い状況に有効な考えで、特に「記憶」に関しては多くの価値が認められています。
このデュアルコーディングを紹介しようと思ったのは、ちょうどごりゅごが「読書メモを手書きで残す」ということを始めたからです。
これまでのごりゅごは「手書きなんて意味がない」くらいのことを考えていた人間ですが「学習」について考えると、手書きにはメリットしかない、と思うようになってきました。
今回はこれらの「手書きのメリット」と「デュアルコーディング」という理論、概念についてご紹介したいと思います。
手書きは「早く書けない」ことがメリット
読書メモは「苦労して書いた方がいい」
以前、ナレッジスタックでそういう話を紹介しました。
📖苦労に対処して高い効果を得る読書法 - by goryugo - ナレッジスタック
「苦労する」ということについて考えてみると、手書きで文字を書くというのは、音声入力やキーボード、フリック入力よりも「苦労する」方法です。
音声入力やキーボードやフリックでの入力は、間違いなく手書きより早いですが、そもそも読書で「スピード」や「冊数」を目標にすることに意味はありません。
読書で最適化するべきなのは、理解力と定着力。そう考えると、読書メモが早く書けるという「効率のよさ」には意味がありません。
手書きで書くという行為は「遅い」ですが、遅いことで「書く前にまとめよう」「内容を要約しよう」というような考えが働き、結果的に内容をより深く理解することができるようとなります。1
手書きのノートは、電子的なノートに比べてスピードが遅く、修正もできません。学生は講義で語られるすべての内容に追いつくほど速く書くことができないため、細部ではなく、語られる内容の要点に集中せざるを得ません。しかし、講義の要点をメモするには、そもそも講義を理解していなければなりません。手書きであれば、聞いたこと(読んだこと)について考えざるを得ません。そうでなければ、根本的な原理や考え方、議論の構造を把握することができません。手書きの場合、純粋なコピーは不可能ですが、その代わりに、言われたこと(書かれたこと)を自分の言葉に置き換えることができます。ノートパソコンに文字を入力した学生は、はるかに速く、講義をより忠実にコピーすることができましたが、実際の理解は妨げられました。彼らは完成度を重視したのです。逐語的なメモは、ほとんど何も考えずに取ることができます。まるで、言葉が耳から手へと近道をして、脳をバイパスしているかのようです。
手書きで書くことに「手間」や「時間」がかかっても、それによって「よりよい学習」ができるならば、時間をかけることはなんの無駄でもありません。
言語と視覚の両方で考えることが重要
視覚情報と言語情報を両方重視するデュアルシンキングという理論では、視覚情報か言語情報の「両方を使う」ということが重要だと言われています。
自分がどちらかが得意か、どちらが好みかどうかは関係ありません。デュアルコードとして「両方やる」ことが大事なのです。
実際ごりゅごは、圧倒的に「言語情報」が得意だと感じていて、視覚情報で考える、ということをほとんど経験したことはありません。
幸いにもパートナーharuna1221が「視覚的な情報の整理」はとても得意なので、自分が書いたメモを見せてアドバイスしてもらっています。
自分が絵を描こうとするなんて思いもよりませんでしたが、いろんな恥ずかしさを捨てると、思ってたほど自分の絵も文字も悪くない感じでした。(ゆっくり書く、というのがすごく大事)
とは言えこれだけでは「デュアルシンキング」にはなりません。より深く理解し、記憶に残すためにも、このノートを「言語情報として書き出す」ことも重要です。
こうやって言語と視覚、両方で訴えかけることで、理解も記憶も進みやすくなる。
始めてから日は浅いですが、言語情報ばかりで考えてきた自分には、視覚的にノートをとるという方法は、脳の新しい機能を使っている新鮮な感覚があります。
文章で書かれているものを文章で記録しようとすると、ついつい「コピペ」になりがちですが、図解しようとすると必ず「自分で考える」必要があります。
この文章を、図や絵、位置関係で表すにはどうすればいいだろう?
こう考えるだけでも、ただ本を読むことに比べて「自分の頭で考える」アクティブラーニングとしての効果は非常に高いです。
手書きというと「めんどくさいことばかり」ですが、めんどくさいからこそ理解できるし、覚えられる。そう考えてみると、手書きして、図解してみるというのも悪いものではありません。
今回「手書き」を始めたきっかけを振り返ってみると、「iPadのはなし」という本や、アクティブラーニングのためのiPadメモ術という記事の影響が大きいのかも、と思っています。
どっちも「五藤晴菜」名義で書かれているものですが、ごりゅごはゴーストライター的なポジションで参加しており、大半のテキストをごりゅごが書いています。
こういった手書きメモを文章に起こす、ということをやっていたんですが「なぜ手書きがよいのか」「どうやっていい感じの手書きメモを書くのか」「イラストを描くためのコツ」などということをひたすら考えて文章にしています。
また、この「AirPods Proの絵」を描いた(想像以上のものが描けた)ことなども大きな転機になったかもしれません。
こういった手書きに関するコツやテクニックは「iPadのはなし」にも色々書きました。
また、iPad Workers NewsletterのPodcastなんかでもそのあたりのことを話しているので、よかったら聴いてみてください。
『How to Take Smart Notes』:10 Read for understanding ↩︎