土曜日と日曜日、ジョニーデシマルという情報整理法について色々調べていました。
A system to organise your life • Johnny.Decimal
「あなたの人生を整理する(オーガナイズする)」というコンセプトで、ストレス無く、確信を持って素早くものを見つけることをサポートすることを目指し、生活のあらゆるものにユニークなIDを割り当てていこう。(ということが序文で書かれています)
具体的には、最大で10のエリアと、エリアに対応したカテゴリを最大で10個まで作成し、その下に2桁の数字でIDを割り振って「人生を整理する」ことを目指していく、というもの。
ジョニーデシマルという名前は、英語の情報整理系の記事なんかではちょいちょい名前を見かけていて、存在だけは知ってたんですが「数字付けて管理するとかないわー」って思って、かつてはそこで思考停止していました。
今回そういう偏見を捨てて色々調べてみると、興味深い部分も多く、単純にこれを真似するというだけでなく、この概念、システムを知ることで自分の情報整理にも多いに応用できそうな感じがしています。
最近サイトがリニューアルされてわかりやすくなっている
2日間かけて本家記事を読み漁ってわかったんですが、どうもこのジョニーデシマルの考案者のジョニーさんは、2023年終わり頃からジョニーデシマルという手法を広げることに専念し始めたみたいで、1〜2年前と比べてサイトも大きく変わり、内容も整理されて非常にわかりやすくなっています。
この1〜2ヶ月の間にもかなり内容がアップデートされた模様で、今がまさにちょうど「次の段階」にさしかかっているという印象を受けます。おそらくデザインも以前とは異なるものになっていて、サイドバーの構成や、フォントなど、デザインも非常に凝っていて好みのサイトでした。
ナレッジマネジメントではなく「人生のオーガナイズ」
ジョニーデシマルという手法で重要なのは、これはあくまでも「A system to organise your life」であるということです。つまり、ごりゅごがこれまでナレッジスタックで語ってきている「アトミックシンキング」なんかとはカバーする対象が異なるものである、ということ。
ごく大雑把な表現をすると、ジョニーデシマルは「仕事や生活の管理」で、アトミックシンキングは「思考の整理・知識の整理」みたいに言えばいいのかな。
なので、両者の手法は共存させることも可能だし、仮に共通点があるとしても、それぞれが異なる思想の手法である、ということを理解しておくことは重要です。
新しいことを学んだり、なにか考え事をするときには、それらを構造で整理することはできません。そういうときはアトミックシンキングが役立ちます。なので、たとえば「読書メモを整理する」とか「デジタルノートを使って勉強する」みたいな場面では、依然としてアトミックシンキングは未だめっちゃオススメできる方法です。なので、ジョニーデシマルがあればアトミックシンキングはいらない、なんてことはなくて、それぞれに、それぞれの得意なところ、いいところがあるんだ、と理解していただけると嬉しいです。
では、このジョニーデシマルというのはどういうことに使ったら便利なのか。まず思い浮かぶのは「覚えておきたいこと」「忘れたくないこと」をうまく整理して、サッととり出すことが出来るようになる、ということです。
必要モノが整理されていて、すぐ見つけられる。このスキルは、現代社会で生活をしていく場合には、一定以上に重要なものであることはまず間違いありません。さらに、たぶんこの記事を読んでくださっている型なんかは、こういうのが上手に整理できてると「いい気分が味わえる・嬉しい」と感じるタイプの人ではないかとも想像します。
ただ、この方法について学んでみて感じたのは、ジョニーデシマルのよいところは単純にこうやって整理が出来て嬉しい、だけではないようにも思いました。
詳しくはこの後でも書きますが、ジョニーデシマルという仕組みを実践しようとすると、必然的に「自分にとって重要なことは何なのか」を深くじっくりと考えることになります。
この「自分になにが大事なのか」を考えるというのは、これはこれで幸福な人生を送っていく上でとても重要なこと。その観点で言えば、仮にこれを続けるかどうかは別にして、これから話していくような「準備」に時間をかけてみる価値は十分にありそうです。
この辺り、自分は『アウトライン・プロセッシング LIFE』で書かれていた、「生活のアウトライン/ライフ・アウトライン」を作ることとも近いように感じました。こういうことを面白いと感じられた方は、きっとジョニーデシマルにも価値を見出せるのではないかと思います。
『アウトライン・プロセッシングLIFE: アウトライナーで書く「生活」と「人生」』
(最大で)10のエリアと(それぞれ最大で)10のカテゴリに人生をわける
ジョニーデシマルについてのきちんとした詳しい内容は本家のページをご覧いただいた方がよいので、ここでは簡単なイメージと、ごりゅごが重要だと感じた部分をかいつまんでザッと紹介します。
まず、ジョニーデシマル(Johnny.Decimal)という名前は図書分類法の1つ「デューイ十進分類法(Dewey Decimal Classification)」をもじったネーミングです。
デューイ十進分類法は、0から9までの数字を3つ組み合わせて3階層(類・綱・目)で図書を分類する、というのが基本。これに対し、ジョニーデシマルでは「AREA+Category」の2つの数字をベースにして、そこに2桁のIDを組み合わせて情報を整理していきます。
ここでまずいきなり大事なのが、この「2桁」というもの。
これは、0〜99までの数字、という考え方ではなくて、0から9までの「エリア」があって、その下に0から9までのエリアがある、「エリア+カテゴリー」に分かれた階層構造である、というところ。(細かいことを言うと、エリアの0番はシステム用に使わずあけておく、みたいな使い方をされているが、今回そこは省略)
同じエリアに所属するものは、どれも同じような概念として理解できることが重要で、本家では「10個の棚を用意する」みたいな言い方もされていました。
このそれぞれの棚が、どんな目的の棚なのか、名前を付けてあげて、その上で最大で10個まで篭を入れてもよい。
上の画像で言うとArea1(生活の管理)の中の5つめのカテゴリー「旅行」のなかにニューヨークへの旅行、というものを整理しておく。
Area1にあるものは全部が生活の管理(Life Admin)に属する(と自分が感じられる)ものを入れる場所である。これが、自分自身の感覚として直感的に理解できる、というのが重要です。
カテゴリー15と16は感覚的に「似てるもの」だとわかることで、認知資源を節約して保管、取り出しが出来るようになるのです。
また、この個数を「最大で10個までに制限する」ことで、ギリギリなんとか思いだせるようにしている、というのもポイント。
もちろん数は少なければ少ないほど理解しやすく、無理に10個作ろうとするのではなく、むしろ減らせるなら減らせるだけ減らした方がいい。直感に従うレベルで、ギリギリまで少なくする、というのが良さそうです。
インデックスが超大事
ここまでが、いわゆる分類のための大原則。
じゃあ、実際にジョニーデシマルというのは具体的にどんな手法なのか。
ジョニーデシマルというのは「パソコンのファイルをうまいこと整理する」というのが起源になった手法で、元々は「見つけやすいフォルダ構成はこれだ」という感じのものでした。
以下の画像のように、10−19っていう「エリア」のフォルダを作って、その中に11から19までの「カテゴリー」のフォルダを作る。実際にファイルを保存するのは、かならずカテゴリフォルダの下。つまり、2階層掘り進んだフォルダの中にフォルダを作って、そこにファイルを収納する、というもの。
さて、この画像をご覧になって皆様はどう感じるでしょうか?
正直自分は「これはないな」と思いました。全然使いやすいと思えませんでした。
確かにこれは必要なものを適切に管理する方法かもしれないけど、保存も取り出しもくっそめんどくさそう。これなら、年月でフォルダを作って、そこに検索を組み合わせたりした方がずっといいとも思いました。自分と相性がいいファイル整理の方法はこれじゃないと思う。これが正直な感想です。
はじめてジョニーデシマルのことを知ったときにそれ以上の興味が持てなかったのは、(記憶が定かでないながらも)こういう説明、こういう画像を見たからじゃないかと思います。
ただ、これまた公式サイトでも書かれていることなんですが、現代はもはやパソコンのファイルさえ上手に管理すればどうにかなるなんて時代じゃないんですよね。
かつてはパソコンの整理といえば「ファイル」を上手に整理することだったかもしれないけど、今や情報というのはファイルだけに限らず、多様な形態を持っている。
メールやらSlackの中に大事なことが書かれており、GoogleドキュメントやNotionのようなウェブアプリ上に重要なことが書かれていることもある。カレンダーの中身も「情報」として重要だし、クラウドドライブなどで他者とファイルを共有すれば、その構造までは自由にできない。
かつてのジョニーデシマルでやれてたことは、今でも有効な部分はあるけれども、それだけでは十分ではないのです。
その対策というか、個人的にはこっちの方が本命だと感じるんですが、ジョニーデシマルは先ほどのファイルの管理の方法に加えて、JDexという名前のインデックスを作ることを強く推奨しています。1
なぜインデックス(JDex)を作るのかというと、そこにファイルだけでなくメタ情報を自由に記述できるから。
というか、適切にインデックスを作ってうまく運用すれば、コンピューターのファイルだけでなく、文字通り「人生全体」をオーガナイズできる可能性を秘めているのです。
例として出てくるのは「14.14 My data storage & backups」というページ。(JDexは、ID1つにつき1つのメモを作ることを推奨している)
このIDは「自分のデータやバックアップの保管場所を覚えておく」ための索引ページらしいんですが、このページの中には「どの場所に自分のバックアップがあるのか」ということがテキストで記述されています。
もはやこれは、ファイルに関するメタ情報というよりも、この索引自体が情報として価値あるものになっている、という印象です。むしろ、この「14.14 My data storage & backups」というIDにはフォルダなんて作る必要はなくて、この名前のノートが1個あれば、それで役割が果たせてしまう。
これをうまく使ってやれば、もう管理対象は無限です。たとえば、自分の家の物置にはどんなものが入っているのか。去年の大掃除では、どんなことをやって、次回どんなことに気をつければいいのか。
こんなことも、先ほどの数字をキーにして、検索せずとも直感的に素早くとり出せる。
ジョニーデシマルという手法のキモは、フォルダに番号を付けて整理することではない。フォルダは補助的な存在で、インデックスをうまく作って運用することで人生全体を体系立てて整理できるようになる。そう理解しました。
Obsidianで「素早く直感的にページを開く」ことに貢献してくれそう
で、ここまで読んでいただけると、これってObsidianを使ったらめちゃ便利じゃね?と予想できるんじゃないかと思うんですよね。
著者はインデックス作りにBearというアプリを使っているみたいですが、Obsidianで「ファイルの貼り付け」をうまく使えば、ほとんどの場合フォルダ構造なんてモノを使うまでもなく多くの情報が整理できるでしょう。
そして、インデックスに数字を使うことで早さと速さが獲得できる、というのも重要です。うまくエリアとカテゴリを作れば、かなりの「数字」を、身体的に、感覚的に覚えて、すぐに入力できるようになります。
コマンド+Oのクイックスイッチャーを使えば、ノートは一瞬で開くことが出来ます。
たとえばごりゅごは「🎸ギターの練習」というノートを作っており、ここから自分のギター練習に関する様々なノートにリンクを貼って全体を整理しています。毎日何十回も開く、というのは言いすぎだけど、このページは1日数回開くことは当たり前だし、そこからリンクされているノートも場合によっては何度も利用します。
じゃあ、それらのノートすべてに一瞬でアクセスできるかというと、必ずしもそうではない。
ノートのタイトルも十分に工夫してるし、🎸ギターの練習、というノートは使いやすい中身を維持するためにそれなりの努力はしているけれども、それでも「一瞬」と言える自信はない。
ギター練習に関するノートは、トップページ以外は数ステップ使ってリンクで到達するか、検索からひらがなを入力して、変換して、目的のノートを見つけて、開く、ということをしないといけない。
絵文字を使うというのはめちゃくちゃ直感的にわかりやすくすばらしいんだけど、絵文字を入力しようとすると、これは一瞬とは言いがたい。
対して、数字は変換も必要なく、目的の数字を入力するだけであれば感覚的には「一瞬」でできる。
もしもここで、何度も使うカテゴリや何度も使うノートのIDなどが身体化されて、半ば無意識に、感覚的に目的の数字を思い浮かべることが出来るようになれば「一瞬」で目的のノートに到達できるようになるはず。
もちろん、この「一瞬」というのはすべてのノートについてそれが言えるわけではなく、感覚に馴染んで自分が身体で覚えたノートに限定されます。
ただ、数字という存在は目的のノートに辿り着く方法が単純に1個増えることを意味するわけで、うまくエリアとカテゴリが自分の感覚と一致した、よい体系立てがされていた場合、整理の手間以外のデメリットはほとんど存在しないはずです。なんなら逆に、自分が考えた体系というのが整理を助けてくれることすらあるかもしれない。
なによりも、自分の場合はマウスやキーボードを使ってリンクを辿ってノートを開くより、キーボードから一発でノートを開ける方が気持ちがいいと感じます。デジタルノートと長く付き合っていく場合には、こういう気持ちよさというのを大事にすることも重要です。その点でも、うまく数字を作ってあげるといいことは多いかもしれない。
ジョニーさんはObsidianは複雑すぎるから速効で使うのやめたらしいけど、自分としてはジョニーデシマルのインデックス「JDex」をObsidianにうまく応用してあげることで、元々ジョニーデシマルが目指していたこと以上に便利かつ快適に人生のorganizeが出来るようになるんじゃないかと思っています。
とりあえず、エリアやカテゴリは最低1週間くらいはじっくり考えた方がいい、とのことだし、個人的にもその意見には多いに賛成なので、まだしばらくは妄想レベルを超えてはいないんですが、いい感じに整理が出来るようになれば、またここで紹介していきたいと思います。
まとめ
大事なことなのでもう1回言いますが、ジョニーデシマルは「個人のナレッジマネジメント」を対象として考えられた手法ではありません。
少なくともジョニーさんは、PKMという単語を知りもしないような人が「物が壊れたときに、そのレシートをどこに保存したか」がわかるようにする方法として、この手法を広めたいと考えている2ようです。
ジョニーデシマルのコンセプトは「A system to organise your life」であり「organise」(アメリカ英語ではorganize)できることに対して効果を発揮するものです。この単語は、日本語で言う整理、という言葉とはちょっとニュアンスが違って、体系立てる、系統立てる、組織する、みたいなイメージが強い印象です。
ジョニーデシマルでは、そうした体系立てしやすいことを管理対象にすることがポイントなのかな、と思います。
言い方をもっと柔らかくすれば、普通のひとが普通に情報を整理するときに便利な手法である、ということです。
ごりゅごは、a 'PKM' nerdとはまた違うタイプの整理オタクなので、これをどうやって自分なりの使い方に応用していくかをこれから考えていく予定ですが、実際の詳しい手法や哲学などは本家の記事をご覧いただくのが一番確実で間違いないです。
ブログを含めて全部のページを読破した(と思う)んですが、コアのコンセプトを知るだけであれば、ジョニーデシマルの「11」の部分だけ読めばオーケー。ここだけで大体の理解は出来るようになっています。英語なんて、今どきは、ブラウザの翻訳機能を使えば日本語で大体のイメージは掴めます。興味を持たれた方はその範囲だけでも読んでみることをオススメします。
A system to organise your life • Johnny.Decimal
I consider this more important than your file system and encourage you to try it. — 11.05 The index/JDex • Johnny.Decimal
I don't actually see myself as a 'PKM' nerd. I'd like to help normal people -- who have no idea what that acronym means and don't care -- to be more organised. — 22.00.0044 Howcome Johnny is disorganised? • Johnny.Decimal