ナレッジスタックとは直接的には関係ないのですが、先日ブックカタリストの100回記念イベントを開催させていただき、さまざまな方から「ごりゅご」についての感想をいただくことができました。
その中で特に印象に残った感想として、「いろいろなことに興味を持てるのがすごいですね」や、「どうやってその時間を確保しているのですか?」といったお話がありました。
これらの質問に対しての明確にどストレートな回答ではないんですが、この質問に対しては「大人の趣味理論」という概念である程度説明ができると思っています。
「大人の趣味理論」というのはごりゅごが考えた独自の概念ですが、これはわりと多くの人にも応用できる手法だと考えています。(「習慣化が得意」なのは性格ではなくスキルとして獲得できるのではないか?の考え方とほぼ同じ理屈です)
まだ完全に整理しきれてはいませんが、現状の「大人の趣味理論」について、今できる範囲で簡単にまとめてみたいと思います。
大人の趣味理論とは
まず、大人の趣味理論とは何か。
現段階での定義は「30代以降の一定の社会経験を積んだ人間が、人生をより楽しむために、どのように趣味と向き合うべきか」という心構えを説いたものです。
日本で一般的な生活をしていると、学生時代までは望むと望まざるに関わらず、最大10年程度で必ず大きな環境の変化が訪れます。
しかし、大人になってからはそうはなりません。大人になると、自分から意志を持って環境を変えることをしない限り、大きな環境はなかなか起こらなくなります。
これを放置していると、だいたい30代半ば頃から人間関係が固定化してきます。そうなると必然的に「新しい刺激」が少なくなり、自分の生活スタイルも固定化しがち。
もちろんこれは、必ずしも悪いことではありませんが、「大人の趣味理論」の目的の第一歩は、その固定化を防ぐことにあります。
ほっておくと固定化してしまう価値観や生活スタイルを、どうやって崩していくのか。それを考えていくための方法論です。
大人の成長を再確認する
そこで重要なのは、まず「自分は結構すごい」ということを自覚することです。
この「すごい」の比較対象は、他人ではなく、過去の自分です。
小学生だった頃の自分と比べて、大人になった自分はどのくらい賢くなったのか。それを想像してみてください。
たとえば例として「学校の勉強」で考えてみます。算数でも国語でも理科でも社会でも、昔の自分よりもはるかに深く理解し、客観的に考えることができているはずです。
さらには、現在はそこに加えて「インターネットを使えば情報がいくらでも手に入る」ようにもなってきています。
現在の自分は、子供の頃よりもはるかに賢く、しかも多様な情報に簡単にアクセスできる。21世紀の大人が、全力で知恵を絞って何か新しいことを学ぼうとすれば、小学生(10歳の頃の自分)には負けるはずがありません。
つまり、小学生の頃に「できなかったこと」も、大人の情報収集力と知恵を活かして練習すれば、ほぼ間違いなく、子供の頃より「できる」ようになるのです。
特にこれは、自分が不得意だと思っていたことについて有効です。
例えばごりゅごの場合、ナレッジスタックで何度か「お絵描きの練習を始めた」という話をしていますが、小学生・中学生の頃の私は、本当に心の底から絵を描くのが苦手でした。
美術の授業で「やらされる」絵は超絶下手で、自分で見ても不快なだけ。大人になってからは、絵を描くことなんて「いかに避けるか」しか考えていませんでした。
しかし、たとえば「絵が描けない(楽しめない)自分」と「お絵描きを楽しめる自分」なら、どちらがいいかと聞かれたら、答えはどうでしょう?
できないよりは、できたほうがいい。
今までは、そういうことを考えないようにしてた気がするけど、やはり正直な気持ちとしては「できないよりできるほうがいい」だったのです。
上達には時間と練習が必要
どんなことにも言えることですが、「はじめてでいきなり上手くできること」なんて現実にはほとんど存在しません。(ゲーム全般はその点がものすごく上手くデザインされているので、現代はゲームにハマる人が多い、と考えている)
たいていのものごとは、ある程度「できる」ようになるためには、一定の練習と経験が必要です。誰もが最初はヘタクソなのです。できないことを避けていれば、いつまでもできるようにはなりません。ある程度できるようになりたいなら、練習を重ねるしかありません。
その時に思い出して欲しいのは、比較対象としての「子供の頃の自分」です。大人になった自分は、小学生の自分よりもはるかに賢い。この賢さを使えば、子供の頃よりも圧倒的に上手な練習のデザインが出来るのです。
たとえば大人の力(お金)を使って、上手な人に習う、というのも非常に有効な選択肢の1つです。こういうことを思いついて、それが選択できることも大人の力の1つです。
ただし、それはあくまでもたくさんある選択肢の一つに過ぎません。ごりゅご個人の好みとしては、まずは独学で最初の一歩を踏み出していき、一定程度「ハマれる」と確信できてから誰かに習うことを選択する、という方がよいと思っています(自分が地方に住んでいるので、習える人の選択肢が少ないこともそう考える理由の1つ)
上達できるという確信によって挑戦できる
自分がなんでいろんなことに興味を持てるようになったのか。いろんなことを実践する時間を確保できるようになったのか。
結局のところそれは「今の自分は、昔の自分よりできる」という確信が持てるようになったからです。
この「昔」という対象は、小学生や中学生の頃の自分です。
きっと多くの人が「できない」と感じたことって、小学生や中学生の頃のイメージが大人になった今にも残り続けているだけではないでしょうか?
でも、それらのほとんどは、大人の賢さをもって上手に学んでいけば(ある程度までは)間違いなくできるようになります。
もちろん、たとえば「速く走る」ことに関しては、生物的な限界があります。なので、たぶん20歳の頃の自分より速く走ることは出来ません。それでもたとえば、マラソンであれば過去最高の記録を出せる可能性は高いし、野球ならばほぼ間違いなく「あの頃よりできる」(ちゃんとキャッチボールができて、ボールを打てる)までは到達可能です。
そして「大人の趣味」が目指すところは、そこでいいのです。マラソンでオリンピックに出ることなんて目指さないし、プロ野球選手になることなんて目指さない。ただ以前よりも少しよいタイムで走れること。それどころか、タイムなんて気にせず、純粋に自分の身体を使って長い距離を走るという行為を楽しむこと。野球で甲子園大会に出場するのではなく、草野球チームで日曜日に試合をして「あのエラーがひどかった」などと笑いあえること。それができれば「大人の趣味」としては満点です。
そしてこれが「いろいろなことに興味を持てるのがすごいですね」や、「どうやってその時間を確保しているのですか?」という感想、質問に対する答えなのです。
今の自分は、わりとどんなことでも「練習すりゃ、ある程度できるようになるでしょ」という自信を持つことができています。野球はまともにやったことないけど、練習すれば草野球の試合に出るくらいならできると思う。
そういう自信があるから、なにかきっかけがあって「できないよりできるほうがいい」と思ったときに「やってみようかな」と思える。
この自信があることで、たとえ一番最初がとんでもなくヘタクソでも、モチベーションが下がらない。だって、最初に全然出来ないのは普通だから。平均より出来ないのは、ただ「やってない」というだけ。自分がやることは、よりよい練習方法を見つけ出して、それを楽しんで繰り返すこと。それができると思えるから、下手なことを気にせず練習ができる。(そして、あらゆるものごとはけっこうつながっているので、いろんなことを練習すると、そのテクニックが段々他にも応用できるようになってくる)
もちろんこれを実現するには、一定以上の時間とエネルギーが必要です。毎日まともな睡眠時間すら確保できない、という生活の場合、まずはその環境をどうにかする必要があります。同時に10個も20個もいろんなことが出来るわけでもありません。
ただ、とりあえず興味を持ったこと1つを始めるという場合。これならばたとえ毎日10分からでも「自分が自由にできる時間」が確保できるのであれば、そこからはなんとかなります。
必要なのは、まず「上手な学び方」を学ぶこと。そして、上手な学び方の一分野としての「上手に学べるようになる考え方」も一緒に身につけていくこと。
この知識と、考え方さえ身に付けられれば、あとはもう半分自動的に、興味を持ったことに対してどんどん色々な挑戦が出来るようになります。
そして、なにか新しいことを学びたいと思った場合、まず最初にあらゆる人におすすめしたいのが、この「上手な学び方」です。
勉強する、っていうとなんかつまらんとか、退屈だ、嫌なことだ、というイメージをもたれる方も多いかもしれませんが、これは人生をより楽しむための勉強です。実はこの「楽しむこと」もかなりの部分は「スキル」として身に付けることが出来るものなのです。
今回のリアルイベントをきっかけに、こんなことを考えたんですが、そういえばそろそろ、自分が身に付けた「上手な学び方」を言語化することができるのではないか。そんなことを思うようになってきました。
もちろん「上手な学び方」というのは「アトミックシンキング」とも密接につながっているので、それを学んでいくことは、間違いなく役に立ちます。
今考えているのは、ただそれだけではなく、今後はもうちょっと学び方の範囲を拡大して、より広い範囲での上手な学び方というのを「大人の趣味理論」として整理していきたいな、と考えている次第です。
これまでの「大人の学び」シリーズ