色々な場所で言及していますが、最近ごりゅごは「ギターの練習」ではなく「Pad(という楽器)の練習」にハマっています。
Padについての詳細や、私がPadに夢中になるまでの経緯、そこから生まれた新しい出会いについては、下記の記事にまとめています:
ニッチを突き詰めれば競走は発生しない - by goryugo - ナレッジスタック
「練習記録を公開するだけ」で超うまくなる
上記の記事から約2ヶ月が経ちました。ごりゅごのTwitterやBlueskyをフォローしている方はご存じかもしれませんが、最近ごりゅごはほぼ毎日、Padの演奏動画をSNSにアップしています。
ごりゅごはPad練習歴数ヶ月の初心者なので、今アップしている動画は人を音楽的に楽しませるレベルには全然到達していません。
それでもなぜそんな動画を公開するのかというと、理由はとても簡単。自分の演奏動画をアップすることこそが最も効果的な練習方法だと確信しているからです。
まず単純に、毎日演奏動画を撮影してアップロードすることで、練習に明確な「目的」が生まれます。これだけでもシンプルにモチベーションが高まります。さらに、こうやってアップした動画は毎回「師匠」が見てくれています。そしてそこでは、自分一人では気がつけないこと、気がつけたとしてもずっと時間がかかったかもしれないようなコツや注意点をすぐに教えてもらうことができています。
こうやって「練習、撮影、フィードバック」という一連の流れが、とにかくめちゃくちゃ効果が高い。主観的なイメージで言うと、1人で家で練習するだけの場合と比べて10倍くらいのスピードで上達できてるような気がします。
一ヶ月前にアップした一番最初の動画と、そこから約1ヶ月経過してからの動画を見比べると、音なんて聞かなくても指の動きが格段にスムーズになっていることがわかるはずです。
1ヶ月前は無駄な力が入っていて、指がぎこちなく動いていましたが、今は余計な力みがなくなり、スムーズに動かせるようになったと思います。これは師匠のフィードバックを受けながら、毎日練習動画を撮り続けたおかげ。
さらに驚いたのは、Padでソロを練習してみた時のことです。2年間練習してきたギターでは、おそらく1週間練習しても同じフレーズは弾けません。しかし、Padならば数時間の練習でひとまず形にすることができました。
これができたのも、毎日練習動画を公開し、師匠からフィードバックをもらうという「公開」を前提とした練習サイクルのおかげ。「基礎」を繰り返して、基礎的な指使いが大きく上達していたからこそ、難しいこともスムーズにできたんだと思います。
公開を前提とすることで、日々の練習に適度な緊張感と責任感が生まれる。さらにそこに、師匠からの的確なアドバイスがある。この組み合わせが、独学では決して得られない成長スピードをもたらしています。ギターをある程度練習してきた経験があるからこそ、この「公開して学ぶ」アプローチの効果の大きさを実感できました。
たとえば師匠の指摘で役に立ったのは「指使い」に関連することでした。師匠から「ここの指使いを変えたほうが良い」というアドバイスを受けて試してみたところ、それだけで演奏が明らかにスムーズになりました。
これ、もし独学でやっていたら、気づくのに数ヶ月かかってたと思います。というか、動画を使って自分の演奏を振り返ってみても、自分だけではそのことに気付くことはずっとできなかったかもしれない。
そして、こうやって動画を公開しながら練習することで「簡単なこと」を楽しめるようにもなりました。同じフレーズを繰り返し練習することって、退屈で飽きやすいんですよ。これが、動画公開が前提での練習ならば、むしろ楽しんで同じことに取り組めてしまう。
この辺りも、フィードバックをもらって改善点が明確になることで、同じことを繰り返すことの価値を強く実感できるようになったからかもしれません。
大人になってからの「師匠」との出会い
よく考えてみると、大人になってから誰かに何かを教えてもらうのってたぶん初めての経験です。こうやって人からなにかを学んでみて得られたことを整理してみると、自分にとっては以下の3つのことが重要なことであるように感じました。
1. 初心者に最適な学習路線を示してくれる
新しいことを始めるとき、自分だけで試行錯誤するのではなく「こういう練習をすると良い」というアドバイスをもらえることにはものすごく大きな価値があります。
これは、特に学びの初期段階で重要です。初心者であればあるほど、いちばん最初に何が「正しい」のかを判断するのが難しいものです。
だから、初心者はそもそも「なにを練習したらいいのか」を適切に判断することができない。極論、信頼できる師匠を見つけられたら、最初はとにかく師匠を信頼して、言われたことをやってみることが大切です。
自分なりの効率的な練習方法なんてものは、ある程度その分野の理解が深まってから考えるべきで、まずしばらくは言われた通りのことをやってみる。これが一番練習効果が高い。
この超初期段階は、独学で進めるのは大変すぎます。ほとんどの場合、必要のない苦労で時間を無駄にしてしまうことになります。
2. 個人に合わせた成長の指針を示してくれる
とはいえ、練習方法を教えてもらうメリットは、ある程度上達すると重要度が下がってきます。さらに言うと、現代では一番最初になにを練習すべきことは、本や動画を探せば大抵いくらでも見つかります。
じゃあ師匠がいると嬉しいことはなにかというと、師匠という存在が自分の得意不得意を見極めて「指針」を示してくれることです。
なんなら、師匠が存在する価値のほとんどすべてが、この「指針を示す」ことにこそあると言っていいくらい。
自分に何が足りないのかを判断し、「今の段階ではこういうことをやると良い」と指導してくれたり、変な方向に進もうとしているときに引き止めてくれること。これは、本や動画では実現が難しく、さらにAIに頼っても中々うまくいかないことです。
ここは、これからもしばらくの間は人間に頼る価値が大きい部分であり続けるはずです。
3. 人間らしい励ましでモチベーションを維持・向上させてくれる
そしてなによりも、こうしたやりとりの相手が「人間である」ということ。これがとても重要です。本や動画、AI相手では、こうしたやりとりが難しいだけでなく、やり取りを通じて得られるものというのが質的に大きく違う。
具体的に言うと、人間相手にやり取りをしていると、そのこと自体が自分に大きなモチベーションを与えてくれるのです。
師匠に「練習の成果を見てもらう」ために練習動画をアップする。まずそこで、よい意味での締切効果が生まれます。
さらに、師匠が上手に褒めてくれるから、そこでシンプルにいい気分になれて、練習へのやる気も増えます。人間、何歳になっても褒められることは嬉しいものです。上達してるよ、と言ってもらえるだけで、ものすごくやる気が出ます。
結局、ほとんどのスキルは数を重ねることが重要で、繰り返していれば自然に上達するものです。つまり、やる気さえあれば勝手に練習して、練習を繰り返すことでどんなことでも半ば自動的に上達していくものなのです。
この、モチベーションを上げてくれるという役割は、AIによる置き換えがもっとも困難な仕事でしょう。機械ではない特定の存在がいて、その人が認めてくれる。我々が人間である限り、AIに評価されるより人間に評価される方が嬉しいという仕組みは、おそらく変わらない。人間からもらえる評価というものが、そのまま自分自身へのモチベーションにつながるのです。
自分も「師匠」的な役割ができるのではないか?
こんな体験をしてふと気がつきました。今自分が始めようとしているObsidianを使った「アトミック・シンキング実践ワークシート」でも、同じようなことができるのではないかと。
すでに簡単に紹介していますが、「アトミック・シンキング実践ワークシート」で最初に行う練習は「デイリーノート」です。いきなり「自分のアイデアをObsidianで整理する」のは簡単ではないため、まずはデイリーノートに様々なことを書くところから始めます。これは間違いなく効果の高い練習方法です。
あとは、ごりゅごを信じて「とりあえずやってみる」ができるかどうか。(ここは、自分が信頼してもらえているかどうかにかかっています)
まずここまでは、読んで実践してもらえればクリアです。
残るは、指針を示しつつ、モチベーションを維持しやすい環境をどう作るか。
そこで思いついたのが、Discordにコミュニティを作り、そこでデイリーノートを公開していくというアイデア。
ワークシートでは、まずはデイリーノートに「食べたものの記録」を毎日書くことを提案しています。これを少しずつ高度なものにして、日々の思考整理やアイデアの蓄積へと発展させていくイメージです。いきなり複雑なことをするのではなく、シンプルなことから始めて、無理なく継続できる仕組みを目指しています。
これを無理のない範囲でDiscord上に公開することで、フィードバックがもらえてモチベーションにつながることができるようになるのではないか?
もちろん、何がなんでも無理に投稿する必要なんてなくて、他の人の投稿を見るだけでも役立ちます。他の人の記録の仕方や発想から刺激を受けることができますし、どのようにアウトプットすればよいかの参考にもなるでしょう。
そして、ごりゅごがこれを褒めたり、誰かにいいねしてもらえたりすれば、モチベーションが継続しやすくなります。一人続けるのが難しいことも、仲間がいれば案外やれる。もちろん、そういったものが必要ない人は使わなければいいだけ。これは、コミュニティやサードプレイスを求める人には素晴らしい場所になる可能性もあるんじゃないだろうか?
なお、今回の試みは「ワークシート購入者向けの実験的なおまけ」という位置づけなので、このやり方がうまくいくかは保証できません。
全員が毎日投稿してくれたら、すべてにコメントする時間やエネルギーが追いつかないでしょう。さらに言えば、これは記事を書きながら思いついたアイデア段階のものなので、実際にDiscordでどのようなことをするかはまだ決まっていません。あくまで「おまけ」であり、今後の進め方もこれから考えていくものです。
ただ、こういう感じでコミュニティをうまく機能させたいというのは、自分の音楽体験を通じて、より強い思いになっています。
ごりゅごは、音楽において師匠に出会ったことで、初めて「できるようになる」感覚を体験しました。
ならば次は、自分が教える側として「できるようになる」感覚が得られる嬉しさを知って欲しい。
自分の場合、デジタルノートを追求することが得意だった。だからその強みを活かして、他の人にも「デジタルノートができるようになる」感覚を味わってもらいたい。
師匠や仲間の存在は、何かを学ぶ過程で非常に重要です。誰かに見てもらえる、認めてもらえるという単純なことは、それだけで人間のモチベーションを大きく高めてくれます。
Obsidianのワークシートを通じて、利用者の皆様にもこのような素晴らしい学習体験を提供できればと考えています。