前回紹介した「アトミック・シンキング実践ワークシート」
「アトミック・シンキング」の序盤では、いきなりアトミックなノート(という難しいもの)を作ることは目指しません。
とにかくすべてをデイリーノートに書いていく。これをひたすらに練習していきます。
少なくとも数ヶ月程度ならば「デイリーノートだけ」でも十分にうまくデジタルノートを使っていくことができます。それ以降のことは、デイリーノートが「ちょうあたりまえ」になってから身に付けていくべきである。そういう考え方です。(なにかメモを残そうと思った時に、無意識でデイリーノートに記録する、という状態になることが重要。さらに言えば、この「メモを残そう」と思う回数が増えるも同じくらい重要)
ワークシートの「読み物」の中では、なぜデイリーノートが重要なのか、なぜデイリーノートさえあればそれで十分なのか、という説明をもう少し詳しく書いています。今回は、その一部をご紹介したいと思います。
来週の会議に向けて、前回の会議でメモした内容を確認したい。そんなことが必要になった時にどうやってメモを見つけますか?
コンピューターでメモを残している場合、Wordを使ったり、Obsidianのようなデジタルノートを使ったりといった様々なメモの残し方が考えられます。
そうしたメモはどのように整理していますか?
たとえば、年単位、月単位のフォルダを作ってノートを整理する。Wordなどで書類を整理するなら、これが一番無難で間違いがない方法でしょう。
でもこれって、新しいファイルを作るたびにファイルに名前を付けて、保存するフォルダを指定して、そこに保存という、大変手数の多い処理をしなければなりません。毎回毎回あらゆるメモでそんなことをするのは面倒で、ついつい適当にデスクトップに「無題のファイル」が増えてしまう。そんな人は多いかもしれません。
また、デジタルノートに慣れている方ならば「どんなノートも検索すればいい」と考え、特に整理などすることもなく、それで問題なく仕事ができている人もいらっしゃるでしょう。
でも、それって本当に「検索」で「簡単」にノートを見つけられていますか?
実は、キーワードを使ってノートを検索することって、案外大変で苦労が多いものです。
前回の会議のノートを探す時に「会議」なんてキーワードで検索すると、きっとたくさんのノートが検索結果に出てきてしまいます。
それで目的のファイルが見つかればまだ救われます。でも、探したい会議の記録に「会議」というキーワードが含まれていなければそれまで。検索は無駄足に終わってしまい、次の検索ワードを考えなければなりません。
たしか、前回の会議の議題ではAIについて検討していたから「AI」で検索すれば見つかるかも、と今度はキーワード「AI」で検索。またしてもAIに関するノートがたくさん出てきましたが、どうにか目的のファイルを見つけることができた。
結果的にノートは見つけられたけど、ノートを探すだけで5分以上の時間が経過してしまった。これなら、きちんとファイルに名前を付けて、フォルダに整理しておいた方がよかったじゃないか。
こんなことはわりと「ありがち」なことかもしれません。
フォルダで整理するのは、整理して保存するのが面倒。整理の手間を惜しんで検索でどうにかしようとすると、見つけるのに苦労する。
もちろん、こうしたことが起こらないようにするのが「整理術」と呼ばれるテクニックです。特にObsidianの「リンクを使った整理」という手法は非常に画期的で、具体的なテクニックは、本書の後半でも詳しく紹介していく予定です。
でも、そんな難しいことを覚える前に、もっとシンプルで簡単な整理術が存在しています。
それが、これまで散々話してきているデイリーノートなのです。実は、メモの整理に関する悩みのほとんどは、デイリーノートを使うことを徹底するだけで解決します。
デイリーノートという仕組みは、ほとんど整理が不要でありながら、必要に応じて目的のメモを見つけることも簡単にできるという、現状考えられるもっとも優れた整理システムの1つなのです。
それは、デイリーノートが「日付を基準」にしている、というのがポイントです。この、ごく単純で当たり前に思えることが、デイリーノートを「最強整理システム」にしてくれているのです。
日付なんて、今更なにを当たり前のことを、と思われるかもしれません。ですが、日付というのは人類が発明した整理のための概念です。当然、原始の時代には日付などは存在していませんでした。農耕の発展と共に人間が発明して、現代に生きる我々はそれを無意識に利用できるくらいに当たり前のものになっているのです。
我々現代人はこの発明に熟達しているので、出来事と日付をリンクさせることがかなり自然に行えます。
前回の会議は確か2週間前だったかな?この前の旅行は確か10月くらいに行ったかな?
数年前のことはともかく、数ヶ月くらいの範囲内の出来事であれば、大抵の人はこのくらいのことをそれほど苦労せずに思い出せるでしょう。これは、日付や曜日、数字といった概念がごく当たり前に使いこなせるからこそできることです。
だから、我々はノートの整理に、人類が最強に得意な方法である「日付」をまずは多いに活用する。
フォルダを作ってノートを整理する必要はありません。ファイルに名前を付けたり、検索で見つけやすくする工夫も必要ありません。
ルールはシンプルです。今日のメモは、すべて今日の日付のデイリーノートに書く。まずはとにかくこれを徹底することです。
これだけで「会議のメモが見つからない」問題の大半は簡単に解決します。
2週間前の会議のメモを探したいと思えば、2週間前に会議があった日付のデイリーノートを開く。それだけですぐにメモが見つかります。もし日付を覚えていなくても「2週間前」という期間がそれほどズレていなければ、2週間前のデイリーノートを何個か確認すれば会議のメモはすぐに見つかるでしょう。ほとんどの場合、検索してメモを探すよりも早く見つけだせます。
もしも探したいメモを書いたのが1年以上前の出来事で、細かい日付が思いだせない時にはどうするか。そういう場合は、カレンダーや手帳、写真などあらゆる情報を使ってまずは該当の日付にあたりをつけて、それからノートを探せばいいのです。基本的に、1年以上前の出来事をもう一度見返したくなる場面はそれほど多くありません。そういう時に多少手間がかかるのは避けられないものです。
「すべて」を「完璧」であることを目指さない。これも整理術として重要な概念です。
会議や旅行などは、こうやって日付という情報だけで十分に整理された状態を維持できます。
たくさんのテクニックを駆使して、自分に特化したデジタルノートシステムを作りあげていくことは便利でカッコイイ印象があるかもしれません。ただ、いきなりそんな複雑なシステムを作ることを目指しても、たいてい上手くいきません。まずは、今日のメモは全部デイリーノートに書く。これを徹底するだけでも、ほぼ完璧なシステムとして機能するのです。
このテンプレートの最初の段階で「カレンダープラグイン」をインストールしていただいているはずです。これを使えば、デイリーノートがさらに直感的で、整理された記録になるので、こちらも多いに活用していただくと良いでしょう。
まずこのデイリーノートを、数ヶ月間使いつづけてみましょう。少なくとも数ヶ月の間は「すべて」をデイリーノートに記録しておくだけで、Obsidianはうまく使えます。
数ヶ月はいいけど、じゃあその先はどうしたらいいんだ?と思われた方。まず数ヶ月はデイリーノートに慣れることだけを目標にしておけば問題ありません。
そこから先の便利な使い方は、数ヶ月間デイリーノートを使いながら、少しずつ身に付けていきましょう。
当然、デイリーノート以外の整理術は、たくさんあります。数年単位でデジタルノートをうまく使おうと思えば、デイリーノート以外の仕組みも活用した方が便利になることは多いでしょう。
しかしそれは、今目指すべきことではありません。
ノートを使い始めたばかりの段階では、自分は、どんな情報を整理しておくと便利なのか。これを見つける時間が必要です。「すべての情報」を整理しようとすれば、当然苦労は大きいし、無理が生じてきます。そうしたものは、全部デイリーノートに書いてあると確信できるだけで十分役に立ちます。
そうして、数ヶ月間デイリーノートを使いつづけていると、そのうち何度も参照する情報、というのがいくつか出てくるはずです。整理の対象は、そうした何度も使うノートだけ。だから結局「数ヶ月はデイリーノートだけ使っていればいい」という結論に再び落ち着きます。
すべてをデイリーノートに書くことが当たり前にできる。これは、書いて考えるための第一歩でもあります。
書いて考えるためには、頭の中にある「なにか」を、文字やイラストなど、なんらかの形で書き出すことが必要です。特に現代は「ことば」の重要性が高く、アトミックシンキングも基本は「ことばで考える」ことを想定した思考法です。
そのためには、まずあらゆる出来事をことばとして残しておけるようにすること。その練習という意味でも「デイリーノートになんでも書く」という習慣が重要になってきます。
アトミック・シンキング実践ワークシートについて、詳しくはこちら
Obsidianでアトミック・シンキングを実践するためのテンプレートを作りました
Obsidianを使いながらアトミック・シンキングを学べる素材「アトミック・シンキング実践ワークシート」という名前の、Obsidianのテンプレートを作りました。
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