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Obsidianをどういう風に使っているのかについて。
前回はObsidianを使っての読書メモの作り方についてまとめたんですが、そういえばもう一つ大事なやつがありました。今ごりゅごは「本を書くツール」としてObsidianを多いに活用しているのです。いわゆるObsidianに本を書くための資料を集めるとかではなく、執筆工程の多くの部分で「Obsidianを使って直接文章を書いている」のです。(このニュースレターも最近はほとんどObsidianで書いている)
本を書くという場合、構想を練るとか、最終的にパッケージングをしたりとかがあって、厳密に全部をObsidianだけで済ませたわけではないですが、人に「何使って書いた?」と聞かれれば「Obsidian」と答えるくらいは「ほぼObsidian使った」と言える感じです。
特に、Obsidianはローカルでマークダウンファイルを扱うツールであるおかげで、セルパブで本にする「最終工程」の手数が少なくて済むことなんかもメリットだったりします。
(まだ本は完成してないんだけど)どんな感じで書いていったのか。どういうところが便利なのか。そのあたりをまとめてみたいと思います。
前提
まず今回の話の前提。Obsidianを使った理由の一つは、今回の本が「セルフパブリッシング」(KDPで販売)であることと関係している。
セルフパブリッシングでは、原稿を書く以外の「本にする」仕事全般を自分でやらないといけない。具体的な話で言うと、マークダウンファイル、画像、cssを自分で一通り揃えて、Pandocというツールでepubファイルを作る、という作業まで済ませて「完成」となる。
Pandoc User’s Guide 日本語版 — 日本Pandocユーザ会
自分が経験した範囲では、紙の本は編集者にテキストを渡せばあとは出版社側が「本」という体裁にしてくれた。これと比べると、自分ができること・やらねばならないことの範囲はかなり広い。
自分自身の「書く」ことや「表現すること」の原点はHTML。そして、電子書籍の基本フォーマットであるepubは、大ざっぱに言えばHTMLをパッケージングしたもの。原稿の大半は見出しと太字くらいあれば事足りるし、細かなレイアウトはcssで調整してやればいい。このあたりは自分が長いことやってきた「ブログ」とやることが同じだ。技術的な部分に関しては「今までと同じ方法」で本が作れる。
こういうところまで踏まえて「マークダウンで書く」ことを選択し、Obsidianを使う、という判断をした。
目次をmdファイルで管理する
こういう前提条件がある中で、わざわざObsidianというツールを使った理由は何なのか。
一言で簡単に言うと、目次ノートというものをObsidianの中に作ったら本を書くのが快適になるのではないか、と思いついたからだ。
本の構成を決める目次というやつは非常に厄介なものである。最初にざっと「どんな事を書くか」考えて目次、アウトラインなどと呼ばれるものを作るのだが、当然その通りにうまく書くことはできない。書きながら何度も順番を入れ替えたり、内容を削ったり追加したりと軌道修正が繰り返される。
目次ノートという「ノート」でこの全体像を把握できるようにしたら、この軌道修正に対応しやすいのではないか、と考えたのだ。
特に、Obsidianは「ノートへのリンク」が簡単に扱える。本の目次も「トピックノート」のように、それぞれの原稿への「リンク」という形で全体像を確認しながら書けるのではないか。そういうことを「思いついた」
Obsidianのノートをまとめるノート「トピックノート」 - by goryugo - ナレッジスタック
特に執筆の初期は構造の変更が多い。これがObsidianの中で簡単にできることの効果は大きい。かつてScrivenerというツールで本を書いていた理由の半分くらいは「ドラッグドロップで原稿の順番を入れ替えられる」ことだった。目次ファイルの並び替えが簡単にできれば、これに近いことがObsidianでも実現できる。
原稿を並べて書ける
また、こうやって並べたリンクは「Open link under cursor in new pane(カーソル下のリンクを新規ペインで開く)」のショーットカットがあれば違和感なく「隣の場所」に開ける。
Obsidianは「上下左右に何個でも原稿が並べられる」というのも特徴で、目次と原稿を同時に開いたり、複数の原稿を何個でも左右に並べて比較しながら書ける。(Scrivenerでも文章を並べることはできるが、基本二つまでという制限がある)
たくさんの原稿を横方向に開くと、縦に長い原稿よりも目的の場所にたどり着きやすいというメリットなどもある。また、原稿が長くなったらそれをさらに分割することも簡単。
このあたりの「いつも自分が使っている感じ」の操作が簡単にできることも自分がObsidianで書くのが便利だと感じた理由の一つだろう。
インライン表示で全体像を確認できる
もう一つ便利だったのが、いま全体像がどうなっているかを知りたい、全体を読み直したい、と思ったとき。
Obsidianのリンクは基本[[ノート名]]
で表現される。これを![[ノート名]]
に置き換えてやると、文章はインラインで展開されるので、スクロールだけでリンク先のノート全体が読める。
[[ノート名]]
を一括置換を使って![[ノート名]]
に変えることなどは簡単にできるので、この方法で簡単に目次ノートは「原稿全体」に切り替わる。この段階では(css次第だが)まだ全体が読みにくいことも多いが、そういうときはObsidianのPDF書き出し機能を使えばいい。きちんとPDF化したものに比べて見栄えはあまりよくないけど、簡単に全部が読めるPDFを作ることができる。
その他
その他、細かいところで言うと、Obsidianの中であれば、自分がこれまでにObsidianで書いたノートを参照するのが簡単だったり、ボツ原稿が発生しても、それを「アトミック・ノート」に作り替えてやることでもったいない感が減少すること。
ごくたまにiPhoneやiPadで原稿を触ったりできることなども、Obsidianアプリを使えばいい。こういう点も(あんまり快適ではないけれども)手軽で便利だった。
あとは、わりと重要なのがObsidianのコアプラグインであるWorkspaces。これは、開いているファイルや、サイドバーのレイアウトなど様々な状態を覚えておいてくれて、このモードを切り替えることでObsidianを開いた状態からほぼワンアクションで「いつもの執筆の状態」に切り替えることができる。
この切り替えの速さも、Obsidianを普段から使っている自分と相性が良かった。他のツールを使うことに比べて、いい意味であまり気合いを入れずに書き始められる。このあたりの精神的な部分。執筆に取り掛かるまでの「重さ」や「軽さ」はなにが最善かは模索中ではあるが、今は「なんとなく取り掛かれる」ことのメリットが大きいのではないか、と考えている。
まとめ:自由な並び替えの重要性
ある程度まとまった分量の文章を書くときに大事なのは「原稿の並び替えが簡単にできること」だと思っているんだけど、自分が知る限りで、それができるツールはとても少ない。現役のツールで自分が知ってるのはScrivener かUlyssesくらい。
他は、たくさんの原稿を並べ変えようとすると「更新日順」とか「ファイル名順」で並べるしかない。
過去に一度、最初から数字+ファイル名で原稿を並べて、VS codeを使って書く、ということも試したことがあるが、これはファイルの順番を入れ替えようと思うと死ぬ。Pandocでの最終工程では「先頭に数字」は必要になるので、それだったら対して手間が変わらないかも、と思ったけど全然そんなことはなかった。
こういうやり方をすると、必要ないことで混乱してしまって、本来必要でないことに知的エネルギーを消費してしまう。
最後の最後に効率が悪い手作業でのファイル名変更が含まれるとしても、書いている途中に並べ替えで悩まされることを考えれば一億倍くらいマシだということがわかった。
そして、結局それならObsidianのノートで目次ファイルを作るのが一番自由度が高くて融通が利く方法だと気がついた次第。
今は、これでええやんという気持ちで満たされている。
余談:gitbook
実は、Obsidianで目次ファイルを作れば本作りが便利になるのでは、というのはgitbookというツールに大きくインスパイアされた方法です。
gitbookは、もともとコマンドラインベースのHTML作成ツールで、目次ファイルと原稿ファイルを用意しておくと、コマンド一発で目次付きのHTMLを作ってくれる、というものでした。
今はそこからいろいろ仕様が変わって、有料前提のウェブサービスになってます。
その後、honkitというツールが出てきて、gitbookと同じようなことはできるみたいなんですが、あくまでも基本はHTMLを作るもの。どうもepubやPDFも作れるっぽい?とか思ったんですが、そこを掘り下げるより「Obsidian+Pandoc」という形でいいか、となった次第です。
この部分はまだあまり掘り下げて調べたりできていないので、もしなにかオススメのツールや方法があれば是非教えていただきたいです。