Obsidianを使い始め、アトミックノートという概念について試行錯誤している時期は、毎日3〜4時間(もしくはそれ以上)Obsidianと向き合い、ひたすらノートの整理を行っていました。
とは言え現実的にそれを無限に続けられるわけはなく、最近は「ノート整理」に使う絶対的な時間は減少傾向にあります。(ノートの振り返りは1日30分〜1時間が目標。それ以外に「ノートを書く時間」もあるので、厳密な時間配分は曖昧)
特に5月はLogseqとObsidianの共存というのを主に考えていたので、なかなか「ノート整理」にはエネルギーが割けずにいました。
そんな状況だったんですが、ある日「じっくりトピックノートを作る」ということを意識してみたら、自分の脳内の整理が捗りまくっておどろきました。
ここ最近読んでた本についてのことや、最近考えていたこと、ObsidianとLogseqの共存についてなど、いろんなことがノートを作ったことで一気にまとまった感覚を味わうことができ、この「トピックノート」というやつの効果の大きさを改めて実感しました。
Obsidianは「ノートリンクを作る機能」が大変優れています。少なくとも自分が今までにある程度試したノートツールの中では確実に「もっともよい」と言えるレベル。
そんな、ノートリンクを生かしたObsidianでのノートをまとめる方法が、ごりゅごが〈トピックノート〉と名付けた概念。これについて、改めてその効果や方法などについてまとめてみたいと思います。
脳内でノートが整理できないので書いて整理する
トピックノートは、ある特定のテーマ(トピック)に関連するノートへのリンクを集めたノートの名称。ノートに一つのことを自分の言葉で書く「アトミックノート」とは性質の異なるノートで、ノートには「一つのテーマに関連したノートだけとリンクしている」というもの。
(トピックノートというのはごりゅご独自の呼称なので、ほかの人に話しても通じません)
アトミックシンキングという(ごりゅごが考えた)思考法では、自分の考えは「書いて考える」ことが基本であり、最も重要なこと。つまり、ノートを書くことは「書いたものを整理して活用する」ということだけでなく、書くことによって頭を整理することが大きな目的。
トピックノートもこれと同じで、基本は「書いて考える」ことをベースにした思考法。これまでに書いたノートへのリンクを集めて並べることで、自分が書いたノートを「並べて整理する」ことができるようになる。そして、頭の中を整理するのと同時に、副産物として「整理されたノート」ができあがるというのもメリットの一つ。
わかっているつもりのことも、きちんと書き出して見える化し、そのノートを「考える」土台として活用する。
当然この行為は「自動化」できるものでもないし、自動化するべきものでもない。ノートを作る過程で「考えがまとまる」ことで目的は達成できているので、仮にそのノートを活用することがなかったとしても問題ない。ノートはあくまでも便利な副産物。「ノートを使った・使ってない」などということを気にする必要がなくなるという「精神的なメリット」もある。
こうやって作ったトピックノートは「作っておしまい」ではなく、時間をかけてノートを発展させ、少しずつ育てていくことも重要なことである。とは言え、作ったトピックノートを維持・管理していくことは重要だからといって、毎日常にノートは最新状態を保ち続けないといけない、というほどのものでもない。
基本的には「ふと思いついたとき」にノートのメンテができればそれでいい。
「ふと思いついたとき」にトピックノートを開き、新しいノートが追加できそうであれば追加する。もちろん、新しいノートを作っていて、トピックノートに追加できそうだと「ふと思いついた」ならば、その場でトピックノートにリンクを追加すればいい。
こういう「ノートを作ったらトピックノートに入れる」ことをある程度の期間繰り返してくると、このノートはこれに関連しそうだなと考えることが無意識に、自然にできるようになってくる。そうやって「関連させて考える癖をつけさせようとする」こと自体もトピックノートを作る目的の一つ。
アトミックシンキングの次の段階として、アトミックにしたものを繋げる「ネットワークシンキング」を身に付ける練習、という要素がトピックノート作りには含まれている。
なお、ノートを作り始めた最初期は「ふと思いつく」のは難しいので、obsidianのプラグイン「Spaced Repetition」で振り返る機会を作るというのもオススメ。これに関して詳しくは次回以降にまとめる。
以前書いたもの→すべてのノートを定期的に振り返ることは不可能なので、振り返るノートを厳選する - by goryugo
大きな単語からトピックを作り始める
では具体的に、どういった流れでトピックノートを作るのか。最近作ったトピックノートを使って、たとえばこういう作り方がある、という事例を紹介する。
最近の脳科学の本を読むと、ほとんどの本が「脳は予測している」ということを書いている(と感じる)
この、脳は予測をしている、というテーマに関連するノートを集めたくなり、Obsidianに「📋脳の予測」というトピックノートを作ることにした。
このトピックノートを作ることをどうやって思い立つか、ということは簡単に言語化できないが、大抵トピックノートは「文章ではない」もので「ある程度ノートを作った記憶がある」テーマを選ぶ。(というよりも、ある程度同じテーマのノートが増えたから「まとめよう」と思い立った、と言った方がいい)
他に最近作ったトピックノートは、以下のようなもの。
「脳の予測」「人間の脳の特徴」「フーコー的な社会の捉え方」「logseqとObsidianの比較」「ホメオスタシス」「ハイデガーの用語」
とは言えこれは、ある程度たくさんトピックノートを作ってから新しく作っているような者たちばかり。初期のトピックノートは「英語」「Obsidian」「読書」「アウトライナー」というくらいのテーマでノートを作り、それをボトムアップで分けていく、ということをやっていた(ボトムアップでトピックノートを分ける、という方法も次回以降に取り上げる予定)
検索でノートを見つける
まずはこういった一つのテーマのトピックノートを作って、そこにノートを集めてくる。
のだが、それをどうやって集めるのか、という話である。
これもいろいろな方法があるが、完全にゼロの状態からトピックノートを作る場合、Obsidianの「検索」が役に立つ。
Obsidianには「検索結果をノートへのリンクとしてコピーする」という機能が標準で備わっており、それを使うと最初の大ざっぱなノートの絞り込みに大変役に立つ。
今回作ったトピックノート「脳の予測」に関しては、そのまま「脳の予測」と検索してもほとんどなにも出てこないので、仕方がないので「予測」で調べて不要なものを削る、という方向でトピックノートを作る。
まずはコピーした結果をノートに貼り付ける。ものすごく量が多くてくじけそうになる。
これを見ながら、タイトルから明らかに関係ないとわかるノートなどを消して、まずはある程度結果を人力で絞り込む。そして、順番を入れ替えたりして、関係ありそう、近い、似ている、と感じるようなノートを近くに持ってくる。
タイトルだけで関連しそうかわからないなら、マウスオーバーでのプレビューなども駆使して中身を確認。(現在はコマンド長押し+マウスオーバーでプレビューが出るように設定している)
これらを駆使してノートの選別、並び替えができたら、あとは見出しが付けられそうなノーとのまとまりに見出しを付けてみる。見出しを付けることによって、ノートがまとまると同時に、自分が考えていることもかなり整理される。
この画像の下にはまだ「まとまってないノートリンク」も複数あるが、それらは「またの機会」にまとめられそうなときがあればその時にまとめる。
そういう感じで、わけられそうなノート、まとめられそうなノートをほんの少しまとめるだけでも、自分が考えていたこと、なんとなくぼんやりと思っていたことがものすごくまとまった実感を得ることができる。
また、こうやってノートに見出しを付けていると関連しそうなノートのことを思いだすこともある。そんなときは自力でノートを見つけ出し、それもリンクとして追加。こういう地味なことを繰り返し、少しずつノートを整理すると同時に自分の頭の中を整理していく。
こうやってノートが充実してくると、自分なりの新たな課題(こういうことについて考えたい。こういう部分の考えが足りない)やその解決方法、アイデアなどあらゆることを視覚の力を併用して考えることができるようになる。(これは、目隠し将棋状態を脱却し、将棋盤に駒を並べて考えることができるようになったのと同じ状態)
こうやって一度でも「ノート整理しながら自分の頭が整理できた」ことを体験すると、関連しそうなノートを探すとか、関連しそうなノートに見出しを付けるという行為を自動化できるものではないし、自動化したら意味がない、ということがわかるはず。
こうやってノートを並べる行為は、それ自体が「考えている」状態。考えることを自動化しても意味がないというか、自動化できるなにかを「考える」ことにはほとんど意味はないはず。
グラフから関連するノートを見つけてトピックノートを作る
また、上記の方法以外に新しく試しているトピックノートの作り方として、Obsidianのgraph機能を使う、という方法がある。今回は「graphを使って読んだ本のリストをノートにまとめる」ということをやる。(日々コツコツやっていて、これが大変楽しい)
こちらはまだまだ趣味要素が強く、効果は未確定だが、趣味としての満足度は非常に高いので、合わせて簡単に紹介。
ObsidianのGraphに関する細かな設定の方法などは以下を参照。
💎ObsidianのGraph機能を使いこなしていい感じにする設定 - by goryugo - ナレッジスタック
まず前提として、ごりゅごは以下の条件で「読んだ本ノート」を作っている
読んだ本の記録が残されたノートがある(1冊1ページ)
読んだ本のノートの中に「関連・思い出した本」というノートリンクを書き込んでいる
読んだ本のノートだけが収納されたフォルダがある
この条件下でObsidianのgraphを「読んだ本フォルダの中身だけ」に絞り込むと、以下のようなグラフが作成される。(赤色が「トピックノート」これを眺めるだけでけっこう楽しい)
このgraphはすでにある程度ノート同士がつながっている状態だが、ここに至るまでは「graphを目視してノートを探し、それを元にトピックノートを作る」ということを行ってきた。
「ある程度のノート数がある」「ある程度の本同士がリンクで繋がっている」という状態でノートのかたまりを眺めて、それをヒントにして関連しそうノートを「トピック」としてまとめて、リンクする。そうすると、段々graphが「つながる」ようになってくる。
なお、「一つのノートは複数のトピックノートに所属してもいい」というのがトピックノート作りでは重要なルール。たとえば小説を読んで分類するとき。悩んだ時は「小説」トピックに入れて「ミステリ」トピックに入れて「サスペンス」トピックに入れて、全部のトピックノートからりんくすればいい。『黒牢城』は「ミステリ」と「歴史小説」の両方に分類すればいいのである。そして、こういう分野をまたぐ本がたくさんある方がgraphの見た目も楽しくなる。
このgraphからトピックノートを作るときは、他のノートとつながっていないノートをgraphから見つけられるというのがポイント。最初からある程度ノートを整理できていればそんなことは起こらないかもしれないが、こうやって「あとからノートを整理したい」場合で、コレクション的な要素が強いものの場合、ノートの取りこぼしがないのが視覚的にわかるのは、精神衛生的にも気持ちがよい状態。この整理は、読んだ本のリストさえ残っていれば芋づる式に読んだ本が整理できる。そしてこれは紙の本でを整理不可能な、デジタルだからできる整理の楽しみである。
アイデアノートや知識のノートに関してもこうやってgraphを使って「つながっていない」ノートを見つけられることは悪いことではない。この場合頻度はおそらく1ヶ月に一回より少なくてよさそうだが、ノートを総ざらいしたいときには知っておいても悪くない使い方である。おそらくほとんどは「ゴミ」「無駄」なノートで、もう消してしまおうと思うだろうが、年に1回くらいなら「あたり」を引けるかもしれない。
graph機能は、動作の重さもあって常用するようなものではなくなってきているが、不定期に「目線を変える」ために使ってみるのは悪くないな、とたびたび感じている。いつも使うとまでは言わなくても、完全に「不要」と切り捨てるにはもったいない。
特にアイデアの管理とは違う「取りこぼしがないことが重要」なノートを整理する場合には一考の余地はあるはず。
ということで、今回はまずトピックノートの基本的な考え方と、トピックノートの作り方の事例について。
おそらく今月はこういう感じでObsidianのことについてのニュースレターをお届けいたします。