AIと一緒に1冊を学び尽くす読書術
🧠賢そうな読書ノートでは賢くなれない
以前「アトミックノートを作るスキル」を使って趣味のノート整理をしていた時に、claude君が「ちょっと待った。それは違う」と言い出すことがありました。
これは、以前ブックカタリストで紹介した「WILLPOWER」という本で出てきた「意志力」に関するノートを整理した時のやりとりです。
所々省略してるけど、こんな感じのやりとりをしていました。
(かつてのやりとりを履歴から再現してもらったので、見え方がClaude本来のものとは異なります)
5月後半の体験だったんですが、これはかなり感動したことを覚えています。
この後もいろいろな質問をしてみたんですが、アカデミック界隈というのはけっこう主流派というものの移り変わりが激しい。
昔は正しいと思われていたことが、真反対くらいにひっくり返る。こういうことはよくあるみたいなんですよね。
40年も生きてくると、20年前の正解なんて、なんなら半分くらい違うんじゃないか、くらいいろんなことが変わりまくっている印象があります。
たとえばわかりやすい有名どころの話だと「鎌倉幕府の成立年」とかもありますね。
ナレッジスタックをご覧いただいている方の大半は、社会の時間、歴史の時間で「いい国作ろう鎌倉幕府」のフレーズと共に、鎌倉幕府が成立したのは1192年、と習ったと思うけど、今は「そうではない」という見方が大半になっている。(らしいです)
「宇宙論」とかもそうですね。かつて荒唐無稽と思われていた「平行世界(マルチバース)」なんかが、割とけっこうマジで有力な可能性のひとつとして真剣に議論されるようになっている。
で、こういう内容についてちゃんと知りたいと思った場合、もうほぼ完璧に「AIに聞けばいくらでも学べる」ようになっているんですよ。
(これは、本での学びが不要になることを意味しない。AIは「聞いたこと」しか答えないので、そもそも鎌倉幕府の話や、マルチバース論というものが存在していることを認知しなければ質問ができない)
AIと一緒に学ぶ
で、こういう経験を踏まえて、最近はAIと一緒に「読んだ本について学ぶ」ことをするようになってきています。
たとえば鎌倉幕府の話で言うと「なぜ1192年成立という説はひっくり返ったのか?」に対して「今有力な学説」を教えてくれるし、そこから質問を掘り下げていくと「そもそも幕府の成立とはなにか?幕府とはなにか?政府とはなにか?」くらいのレベルであれば、自分の興味に従って、いくらでも学ぶことができます。
もちろんこれはけっこうエネルギーが必要な行為で、いつでもお手軽に実行できる、というタイプのものではない。でも、とにかくめちゃめちゃ面白い。
そして最近は、こういう学び方を「アトミックシンキング」的に応用して、AIと一緒に読書ノート&アトミックノートを作って、学んだことを整理していく、という方向に進めていくようになりました。
大事なことなので早めに書いておくんですが、ここから話す方法は「効率的に早く読む」こととは真逆の手法です。1冊の本を、全力で面白がって深く理解し、いくらでも語れるようにすること。そういうことを目的とした手法である、ということが前提になります。
むしろ、AIと一緒に読書ノートを作るようになってから、自分ひとりで全部読書ノートを作ってたときよりタイピング量が増えているくらいです。
もちろん、学びというものは単純に時間や量で比較するべきものではないことはわかっているつもりだけど、そのくらい「手間も時間も使う遊び・学び」であるということです。
書いたメモについて語らせる
じゃあ具体的にLLMとの読書メモ作りはどんなことをやっているか。
基本的にまず自分が読んだ本の内容についての文字通りの「メモ」を用意します。これは、ブックカタリストを始めてからずっと練習し続けている行為。
いろいろ実験してみたけど、このメモは「手書きノート」に戻ってきました。
これまでは、その手書きノートを元にして「自分でアトミックノートを作る」のがかつての読書メモの方法。
新しい「LLM連携バージョン」は「画像認識して文字を書き出して」「生成AIにそのノートを読んでもらって対話する」という感じになっています。(画像認識だけならGeminiが安い)
そして、書誌情報やら章のタイトル、自分が書いた読書メモを元にしてclaudeと対話。
ここでなにをやっているのかをclaude君に説明させると、こんなことをやっているみたいです。(claudeは読書メモを「掘る」と勝手に呼んでいる)
掘るとは何か
最大の目的(ごりゅごの学習・ノートは副産物)は SKILL.md が宣言している。それを前提に、ここは掘りの実践を書く。
掘る=本の中身だけでなく、本の外から対立説・学説史・発見の経緯・固有名(人名・仮説名・年・統計)をたっぷり出して、対話で論点を広げること。Claude が多めに語り、ごりゅごが短く反応しながら考えを進める。命題候補は掘る過程で自然に顔を出す。それを拾って命題化するのは掘ったあと。
掘りの技
本の外から固有名と数字を出す(人名・年・統計・命名の経緯)。これが読む価値を上げる核
固有名・術語は日本語と学術英語を併記する(コペルニクス原理/Copernican principle、絶滅債務/extinction debt、ハルデンの法則/Haldane's rule、生物学的種概念/biological species concept)。原語のほうが原典に当たりやすく、訳語だけだと概念の正体がぼやける
違いは別レイヤーで腑分けする(入力と変換、機能と象徴、根源性と象徴性)。同じ括りに見えるものを層で分ける
還元主義の罠を解く(A は B に還元できるかを問い、必要条件と十分条件を区別する)
著者の論点の階層を見抜く(著者が細かく分けないのは浅さか、関心が別階層にあるからか)
関係を一言にする(何がどう効くかを具体語で。鍵と鍵穴のような比喩への言い換えはしない)
他章への伏線で長期構造を出す
1テーマから複数命題が出る。「何が違うか/それぞれの強み」「今どうなったか(著者の見立て)」のように軸で割ると1命題1ノートに分かれるで、こうやって対話と質問を繰り返しながら、あとはごりゅごの「アトミックノートスキル」を使ってアトミックノートを作らせて、読書ノートにリンクを貼る。
メモとノートリンクを残してでき上がったのが、こういう状態。
「やった気になる」と戦う強い意志力
注意しないといけないのは、このノート作りは、claudeに全任せしてしまえば一瞬で終わるし、一瞬でめちゃくちゃ賢そうなノートができてしまう、ということ。
そしてもちろん、賢そうなノートが作れたからといって、自分が賢くなるわけではない、ということ。
賢そうなノートがたくさんできると、容易に賢くなった気分が味わえるんですが、それだけでは賢くならない。
「かっこいいノートを作る」ことが目的なら、賢そうなノートを作ることに価値はあるけど、かっこいいノートは賢くなるための目的ではなく、手段のひとつでしかない、ということです。
特に、生成AIはスキルやルールでかなり厳格に縛っても、あっけなく「よかれと思って勝手に進める」ので、そこはめちゃくちゃ注意が必要です。
claudeの場合、Opus4.8の工数:高(effort: high)くらいにしても、あっけなく「勝手に進めて」きます。(また、sonnetの場合は、チャット欄に生成される文章の知的レベルがちょっと低かった)
せっかく時間やエネルギーや電力を使うのであれば、ある程度効果が見込めることをやった方がいいし、そのためには「時間と体力に余裕がある時」にじっくり取り組む、という意識も必要。
もちろん「時間と体力に余裕がある時」を作るのは簡単ではないので「意志力」に頼るのではなく「よい環境」を作る、という別方向の努力も必要です。
今まで以上に時間と手間をかけて学ぶ
結局、この方法で読書メモを作る実験をしてみてから、読書メモ作りにはマジで今までの何倍もの時間がかかるようになりました。
ただ、すげえ時間がかかるけど、すげえ楽しい。
本を読んで、メモ取って、よくわからなかったことも、わかるまで付きあってくれる。わかった気になってたことが、もっとよくわかる。
関連する文献とかも、一瞬で教えてくれるし、その概念に対して適切な用語もすぐわかる。日本語と英語の両方で用語を並べてくれたりするのも、整理して理解するのにめっちゃ役立ちますね(日本語の方が分かりやすいときと、そうでないときがある。たとえば「北京原人」とか「アウストラロピテクス」とかは、日本語より学術用語で並べた方が、圧倒的に整理しやすい)
結局これ、めちゃめちゃ楽しい「遊び」なんですよね。知ることが面白い。わかることが面白い。
「かっこいいノートを並べる遊び」にしてしまうと、知的な成長があまり望めないけど、知って整理することを目的とすれば、こんな面白い遊びはない。
そうやって趣味、楽しみとして学んでこそ「教養」というものが獲得できるのではないか、と思う次第です。
おまけ:スキルのアップデートをしました
なお、今回の読書モードのアップデートにあわせて、考えを書いて整理する『アトミック・シンキング』実践セットで配布していたAIスキルをアップデートして「読書メモモード」にも対応できるようにしました。(Claude Code版のみ。それ以外は、AIと対話しながら自分の環境に取り込んでください)
読書モードでアトミックノートを作るときには、こういう感じで「参考文献」の情報も埋め込むようにしています。(対話でちゃんと作った賢そうなノートです!ちゃんと役に立つやつ)
また、読書モード対応以外にも、かなりいろんな部分でスキルの中身は変えています。
→更新履歴 | アトミックシンキング Author's Cut
履歴には「新機能」以外はあんまり詳しく書いていないんですが、AIが作りがちな「うさんくさい日本語」を極力使わせないような工夫とかもけっこう追加して、だいーーぶ使いやすくなったんじゃないかな、と思っています。
他にも、descriptionの代わりに「hook」というパラメーターをいれて、人間やAIが検索のフックに活用できるようにしたりとか、できる限り対話でノートを作るように促したりとか、まだまだスキルの改善には(よい意味で)終わりはなさそうな感じがしています。
取りあえず、これは販売から100日くらい経過して、必要な方にはだいたい行き渡ったと思うので、アトミックシンキング実践セットの有料会員用半額クーポンも、6月でおしまいにしようと思います。(クーポンコードはこの記事の末尾に)
今後も、こうした大きな変化があれば、アップデートという形で対応していく予定です。








