はじめに、今週ごりゅごが公開した記事やPodcastなどです。
インタビュー記事は(何があったのか知らないけど)下書き見せていただいてから公開までに何ヶ月かかかってて、だいぶ忘れています。これ、『理系の料理』→『男の家事』というもう5年以上前の書籍からのつながりでインタビューしていただけたものです。紙の本の寿命がいかに長いか、というのを実感するのと、そういう長生きできる本を作りたい、と思ってやってたことなので、それができているというのは大変うれしいことです。
年末年始はあまりできなかったノートの整理ですが、時間に余裕ができて再び熱量が上がってきています。今年は新しい分野として「哲学」を重点的に学んでいるんですが、とにかくこれらをノートに書いて整理していく過程が無限に楽しいです。
今まで考えてきたノートの使い方というのがすごく有効に使えている感じがして、ノートの作り方という目線でも、作ったノートがうまく使えている感覚としても、学んでいることが段々理解できるという意味でも、ありとあらゆる点で無限に楽しくノートを書けています。
で、ほんとは昨年末に書いた記事書いたノートを掘り下げていくための4種類の切り口の続きを書こうと思っていたんですが、残念ながら今の自分ではこれを上手にまとめることができず。かわりに以前から暖めていた「マルチタスク」に関する話をしてみたいと思います。
マルチタスクって、つい最近「人間がコンピューターのために作った言葉」だったって知ってました?
マルチタスクはつい最近人類が”コンピューターのため”に発明した言葉
マルチタスクという言葉は、1965年にIBMが自社のOS「IBM System/360」の機能説明に使われたのが初出1だと言われています。
その後、心理学の世界でも「複数の作業を同時にもしくは短期間に並行して切り替えながら実行すること」を意味する言葉として使われるようになり、業界でもマルチタスクという概念が「発明」されました。 それまで人類はマルチタスクという概念は認識しておらず、複数のことを同時にこなすことなど「考えもしなかった」行為だったのでしょう。この段階で多くの人が想像できるかと思いますが、私が知る限りのありとあらゆる研究で「マルチタスクは有害である」という結果が出ています。
タスクの切り替えにはコストが発生する
なぜマルチタスクは「有害」なのか。いろいろな研究がありますが、一番しっくりくる説明は「タスクの切り替えにはコストがかかる2」というものでした。
人間のマルチタスクは、複数のことを同時にこなしているつもりでも、実際にやっていることは1つのタスクを連続で切り替えて「同時に処理しているように見える」だけだと言われています。ようするに、人間にはマルチコアは搭載されておらず、シングルコアで処理ができるだけ。さらに、タスクの切り替えにはコンピューターよりも大きなバッファとエネルギーが必要なようです。 脳がタスクを切り替えるときは「今やってること」の短期記憶を一回リセットして「次にやること」の短期記憶を脳内にロードする。こんなことをタスクを切り替えるたびに行っているのだと考えると、これはたしかになかなか馬鹿にならないコストがかかりそうです。
コンテキストの切り替えを減らすアイデア
マルチタスクがよくないということが理解できたら、あとはいかに自分の生活からマルチタスクを減らすかを考えます。すべての人に間違いなく適用できる方法はありませんが、いくつかのヒントをご紹介します。
まず効果が高いのは「記録」を取ること。自分が今やっていること、やろうとしていることを折りに触れて記録に残し、こまめに見返して「自分が今何をやっているのか確認する」 これは「コンテクストの切り替えを意識的に行う」という訓練にもなるし、不用意に別のことをしてしまったときに元にもどる指針にもなります。3
なにかあれば記録を残すということの一番の効果は、無意識のマルチタスク化を防ぐ訓練であり、あらゆるほとんどの知的作業で有効に使える方法です。4
自動車工場のラインであれば「1分に1台車が流れてきて」「1分で完成させる」必要があるので、反応時間は「1分」というようなイメージ。
たとえばごりゅごの場合、外部の人と連絡を取る機会が少ないのですが、誰かから連絡があった場合に1週間放置、というのはさすがによろしくない。それを踏まえてメールを見て返信などをするのは1日に1回。反応時間は24時間、と”決めて”います。
いきなり反応時間を守るなんていうのはハードですが、メールチェック頻度などを減らすことは、タスクの切り替え頻度を下げることにダイレクトに影響します。
可能な限り「明確な自分の意思で」タスクの切り替えを行う。これができるようになるだけでも「マルチタスク」「頻繁なタスク切り替え」による集中力の低下の対策はできるはずです。
ちなみに「反応時間」という概念は、メール以外でもLINEやSNSにも大いに活用できます。たとえば自分の場合(幸いにしてFacebookとは完全に縁を切ることができましたが)Twitterを使う時間を完全にはゼロにできないので、反応時間は24時間と決めて、極力それ以上のペースで「反応を確認する」ということをしないようにしています。
まだSNS離れをどうするかというのは自分にとって最適、最善の方法は見つかっていませんが、これも機会があればまとめられたらと思います。
あとがき
以下、2022年から始めたあとがきです。SNS離れを考えているなどといいながらの
Twitterの話、最近少し変えたAnkiのやり方、iPadでの手書についての新しい発見、などについてまとめています。
読み始めた本のTwitterでの紹介
読んだ本を「読み終えて感想を語る」のではなく、読み始めたタイミングから読み終えるまでの複数回のタイミングで随時本の内容をまとめる、というのを試してみています。
まず、読み終えた段階で「まとめよう」と考えてしまうとそれが億劫になってやらない。ならば、ツリー構造で随時、その場その場で少しずつ感想をまとめながらツイートすれば「結果として」本の内容をまとめることができるかもしれない。
それとは別に本の内容をメモするってこともやっているので、棲み分けは難しいんですが、内容のメモとは違う、でもただの感想だけじゃない、くらいの距離感が理想。
ブックカタリストは1つの本を深堀り、という形ですが、Twitterではもう少し「こんな本もあるぞ」くらいの、普段ブックカタリストでは紹介しないような本も紹介することを目指していきます。
仕事前に立ってAnki
英単語の暗記を、一年間ほぼ毎日続けることができました。(やるべきことをやり終えない日は多かったが、まったく触らない日はほぼゼロ)
1年の間にAnkiの進め方、学び方などはいろいろ変化しているんですが、最近は午前と午後のパソコンに向かう前に、立って暗記しながら例文をシャドウイング、ということをやっています。 これは『シンプルな英語』の著者が、自分が知る限りもっとも効率が良い英語の学習法がシャドウイング(言ってることを後に続いて発音する)だったと言っていたことから。
『シンプルな英語』 - ナレッジスタック - Obsidian Publish
第一印象として、一人で家の中で英語の例文を声に出すのとか恥ずかしい、って感じてたんですが、そんなことを恥ずかしいと思う感情の方が恥ずかしいと思い直し、素直に真似することにしました。 朝寒い時期の空調が効くまでのタイミングで、立って発声というのは意外に身体が温まる効果もあったりして、仕事を始める前の「儀式」「ウォーミングアップ」としても悪くないな、と感じています。
💭10分かける価値があることは全て「Anki」する - by goryugo - ナレッジスタック
Ankiを使った英語学習が紙より20倍以上効率がいいので是非試してみて欲しい – ごりゅご.com
改めて手書きの効果の高さを思い知る
2〜3週間ぶりに「手書きで読書メモを作る」という習慣を復活させて、手書きというものの学習効果の高さを改めて実感しました。
この前まで『フランス現代思想史』というものすごく小難しい本を読んでたんですが、年明けに「手抜きテキストメモ」を覚えて、この本も最初は文字だけ(スマホのフリック入力)でメモをしてたんですが、考えを改めて後半から手書き(iPad)を復活させてみたら、なんか前半とは全然違うぞ、っていうレベルで本の内容がよくわかるようになりました。
改めて手書きメモを書いてみて分かったのは、手書きは「素早くたくさんの情報を残せる」ことがメリットだと感じました。
↑のように、文字の色を変えることで「用語解説」ができたり、線を引いたり矢印をつけたりというのが早い。もちろんデジタルでも同じことはできるんですが、自分用のメモであれば手書きの方が早く書ける。そして、この「多くの情報を早く残せる」ことが結果的に考えながら書くという能力を拡張してくれて、難しい本を理解やすくしてくれる。同じ本でこれだけ読みやすさが変わるとは思わず、これは大きな発見でした。
もちろん、同じ本の同じ場所で試したわけではないので、手書きの方がわかりやすかったのではなく、自分が読んだその部分がたまたま簡単だっただけなのかもしれません。
また、少なくとも自分で「考える」場合は、大抵アウトライナーがあれば事足りるので、自分の場合に明確に手書きが有効だと感じられるのは今のところ「理解するとき」だけです。
とは言え、今回はとにかく「くそ難しい気がする本」を手書きしてみて「かなり分かった気がする」ことができて、満足度が高いです。
今年からこんな感じで「Twitterに書くには長いけど、ブログに書くには短い」という小話を「だいたい言いたいだけ」の精神で書いてみています。
どうも自分は人の書いた思考の過程や試行の過程を読むのが好きみたいなので、自分が好きなものは自分も取り入れよう精神で実行しています。ちょうど1ヶ月前くらいから、週末に1週間のことを振り返るというのもやっていて、それと同時にここで書けると、自分にとっても脳内の棚卸しとしてすごくよさそうです。
もし質問やリクエストなどがあれば、コメントやこのメールへの返信でお知らせください。できる範囲でニュースレターなどでお答えしていこうと思います。すべてのメールに返信はできませんが、すべてありがたく読ませていただいています。
Division of attention: The single-channel hypothesis revisited: The Quarterly Journal of Experimental Psychology Section A: Vol 41, No 1 ↩︎
佐々木さん、記録って何の役に立つんですか?で、このことについて多く語っています。 ↩︎
そもそも知的作業というのは人類の遺伝子的にまだ「最適化されていない」行為と言えるので、知的作業をスムーズに進める方法には無限の研究と発展の余地があると考えています。 もう一つは、自分の仕事の「反応時間」を決めること。これは、仕事の依頼などの連絡が来たときに、どのくらいの時間で返事をする必要があるのか、という時間の目安です。 ↩︎