ツァイガルニク効果、という言葉をご存知でしょうか?
リトアニア出身で旧ソビエト連邦の心理学者ブリューマ・ツァイガルニク(1901年11月9日 - 1988年2月24日)が実験によって確かめた「目標が達成されない行為に関する未完了課題についての記憶は、完了課題についての記憶に比べて想起されやすい」という人間に起こる現象についての名前です。
この言葉そのままではわかりづらいので、もうちょっと噛み砕いた言い方をすると「まだ終わってないやつが気になってしまう現象」というようなものです。
仕事は「あえて」キリのいいところで終わらせず、中途半端のままにしておく。これによって「続きが気になる」ので、次に取りかかりやすかったり、その時までに頭が整理されやすかったりするという話は、ツァイガルニク効果をうまくいかした手法として有名なものです。
中途半端な状態のものは頭の中に残り続ける
このツァイガルニク効果というやつは、かなり色々なことに応用ができる大変汎用性の高い手法でした。
そしてこれも、前回の「あとでやるを使い分ける」話と同じく、使い方次第でいい方向にも悪い方向にも変化する効果です。
ツァイガルニク効果というのは「中途半端な状態のものは頭の中に残り続ける」という現象です。
これをよい方に活用したのが、上に書いた「仕事をあえて中途半端な状態にしておく」というもの。
こうしておくことで、仕事の内容が頭の中に残り続けて、仕事をしていない時も「脳が自動で考えてくれる」ので、次に取り掛かるときには「よく考えた状態」から始めることができる。
要するに、なにもしなくても勝手に仕事が進む、とさえ言える、夢のような仕組み。
圧倒的な丸儲けです。
1つのことをじっくりと考えたい時には、この上ないほど有効な方法です。
嫌なことを途中でやめると心に残ってしまう
この「中途半端な状態のものは頭の中に残り続ける」という効果は、悪いことでも同じような効果があります。
自分が考えたいことを中途半端にしておくことで「脳が常に考えてくれる」というのは素晴らしいことですが、逆にいうと「嫌なことが中途半端な状態にあるとずっと忘れられない」ということにも繋がります。
『WILLPOWER』の中では「不快な音を途中で止めてしまうと頭に残る」という事例が紹介されていましたが、それ以外にもたとえば「喧嘩」や「言い争い」など。こういう状態を中途半端なままにしておくと、これが「ずっと頭に残り続ける」状態になってしまいます。
映画なんかで「キリをつける」「ケジメをつける」みたいなことをテーマにしたものはよく見かけますが、これもある意味で「ツァイガルニク効果」を断ち切るためのものの1つ。
ツァイガルニク効果を知ることで、ケジメをつけるというのは人間にとって非常に重要な行為だった、ということがわかるようになりました。
計画を立ててメモリを解放する
では、このネガティブなツァイガルニク効果にはどう対処したらいいか。
ケジメをつける、というのは最も効果的ですが、すべてのことに大きなエネルギーを使うこともできません。
手軽な対策として有効なのは「計画を立てること」です。1
ツァイガルニク効果というのは、脳が「まだ終わってないから覚えておこう」としてしまう現象。
なので「計画を立てる→やったつもりになる」と脳を騙すことで、中途半端な状態を終わらせてしまう、という作戦。
その際に重要なのは、計画はちゃんと「書く」ことです。頭の中だけで完結させるのではなく、自分に「見える」ように表現すること。
別にこれは、計画を立てたからといって計画通りに行動しないといけない、というわけではありません。
コンピュータ用語でいうならば、計画を立てることの効果は脳のメモリを解放すること。一度計画を立てて「脳のメモリを解放してスッキリさせる」ことができれば目的は果たせているわけです。
つまり、もっとも大事なことは「書く」ことで、計画を立てるということは「書くための手段」だともいえます。
「書く」ことの効果は非常に大きく、ほとんど全ての「頭の中がごちゃごちゃで整理できない」という状態に対して大きな効果を発揮します。
GTDでも「気になることを全て書く」という有名な方法があり、これを体験したことがあれば「書く」ことの効果は体験していると思います。(もし体験したことがないならば、一度30分時間を確保してひたすら気になることを書いてみるといいです)
ツァイガルニクループに気をつける
ここで気がつくのは、気になることをすべて書き出すことで起こるツァイガルニク効果。
自分が気になることを全て実行することは人間には不可能です。
そうなると、一度書き出した気になることが実行されずに残り続けると
、またしても「中途半端な状態のままで頭の中に残る」ことになってしまいます。
こういった気になることリストは決断疲れとも大きく関わるもの。
気になることを書き出して、計画を立てることができたら、それで終了。
よほどのことがない限りこのリストは見ないようにするか、思い切って捨ててしまった方が結果的に心の安定につながるのではないか、ということを考えています。
『WILLPOWER』3章 計画を立てるだけで効果あり ↩︎