Zettelkasten(ツェッテルカステン)から始まるデジタルノートの活用についてまとめていきます - by goryugo - ナレッジスタック
上記の続きです。
前回は大雑把にZettelkastenとはなにか、といった話を書きました。今回はその中でも「Zettelkastenで特に重要な3つの基本ルール」を掘り下げて紹介したいと思います。
Zettelkastenで特に重要な3つの基本ルール
Zettelkastenの本質を一言で表現するならば「カードと箱を使った情報整理術」です。
このZettelkastenというものを「文章を書くための手法」として確立したと評価されているのがニクラス・ルーマンで、彼は下記のようなことを「ルール」としてカードの運用をしていた、と言われています。
Zettelkastenのルール - ナレッジスタック - Obsidian Publish
その中でも特に重要で、特徴的だと思われるのが以下の3つの原則です。
1枚のカード(1つのノート、1ページ)に1つのことを書く
自分の言葉で書く
他のカードにリンクする
1枚のカードに1つのことを書く
Zettelkastenの原則の中で、簡単そうに見えて非常に難しいのがこの「1枚のカードに1つのことを書く」というもの。
たとえばこの記事は1つの記事にZettelkastenの「3つ」の重要な原則を書いているので「1枚に1つのことを書く」という原則を満たしていません。
大抵のWebで見つかる記事は多くが「1つのテーマについて書いているが、1つのことについて書いているとは言い難い」ものです。
では、1つのことを書くとはどういうことなのか?
プログラムが理解できる人であれば「ノートはAPIのようにする1」という表現がわかりやすいかもしれません。1つのノートには1つの機能だけがシンプルに短くまとめられているようにする、というイメージです。
APIという言葉をもう少し言い換えてみると、ノートのタイトルを他で使いまわしやすいようにする2という表現をしてもいいかもしれません。
1枚のカードに1つのことを書く理由は「他のカードにリンクしやすくするため」なので、他のノートからも参照しやすいような「短い」タイトルをつけて、その内容について過不足なく書いてあげれば大抵「1つのこと」を書くことができます。
1つのことしか書かれていないとどう便利なのか?
じゃあこの「1枚に1つのことを書く」という原則を守ると、一体なにが便利なのか。
これは、今回の説明で使った注釈リンクを見てもらえると、具体的にイメージしやすいです。
1つ目は「ノートの内容はAPIのようにする」ということ説明するもの。
Evergreen note titles are like APIs(元ネタは英語なので、DeepLでの翻訳結果)なども見てみるといいかも。ただ、翻訳ではリンクの再現ができないので、オリジナルも一度見てみることをオススメします)
2つ目は「ノートのタイトルは他で使いまわしやすい文にする」ということについてごりゅごが以前書いたニュースレターへのリンク。
この2つを見比べてみて、どんなことを思ったでしょうか?
これらを実際に見比べてみると「1つのノートに1つのことを書く理由」が「他のカードにリンクしやすくするためだ」という話が理解しやすくなります。
1つ目のノートは「ノートの内容はAPIのようにする」ということに関連することだけが書かれていて、他のことはなにも書いていません。単純に、リンク先のページをサッと読むだけで過不足なく言いたいことが伝わります。このノートがあれば、今後「ノートの内容はAPIのようにする」という概念はこのノートへのリンクだけで毎回「再利用」ができるようになります。
対して2つ目のノートには「エバーグリーンノートのタイトルは他で使いまわしやすい文にする」という文脈とは違う内容のことがたくさん書かれています。
こういう場合、「詳しくはこちら」って書いてあったのに「こちら」を見ても全然わからん。まずは該当部分を見つけて、そこから適切に前後の文脈を読み取って、ようやく「ああ、そう言うことね」ということが理解できる。
思考には流暢さが重要なので、より流暢に思考するためにもこうやって「1つの概念を1つのノートで理解できるようにしておく」ことの効果は大きいです。
1枚のノートに1つだけを書くのはすごく難しい
「1つのノートに1つのことを書く」というのは、この流暢な思考のためにも大変役立つ方法なのですが、簡単そうに見えて非常に難しいことです。
単純に「短ければ1つのことしか書かれていない」というわけではないし、「長くても書かれていることは1つだけ」ということだって十分にあり得ます。
プログラムのAPIにも単純な「答え」というものが存在しないように「1つのノートに1つのことを書く」というものにも「答え」はありません。
APIに「使いやすいAPIや」「使いにくいAPI」というものはあるかもしれないけど、それは「どういうことをやりたいか」によって使いやすいかどうかも変化するもの。また、使ってるうちに「こっちの方がいいぞ」ってAPI自体を変えることもあるのかもしれない。
同じように「1つのことが書かれたノート」も、使いやすいかどうかはその人次第。そして、自分の知識や考えの変化によってノートの内容も変化していくのが当たり前です。
1枚のノートに1つのことを書く、というのは、それだけで「知的生産」と呼ばれる「自分の頭で考えて新しいものを生み出す」という行為そのもの。
もしこういうことを試してみようという場合、まずは以下のように「読んだ本の内容を1ノート1要素にまとめる」という練習がおすすめです。
goryugo: 🌱読んだ本の内容を「ずっと使えるノート」としてまとめる
という感じで長くなったので、残り2つの「重要なルール」については次のニュースレターでまとめてみたいと思います。